夢に消えたプルサーマル計画

by 西 鋭夫 May 19th, 2021

天然ウラン


原子力発電は今、さまざまな観点から分析されたり、議論されたりしていますが、一つ、とても重大なことが忘れられています。それは、原子力の原料となる天然ウランについてです。

原発というと無限のエネルギーと言われますが、その原料となる天然ウランは有限であり、底が尽きる可能性もある。日本はこれをどこから買っているのか。その採掘場では何が起きているのか。

日本は、オーストラリアやアフリカから天然ウランを購入しております。オーストラリアでは先住民族が住んでいた地域が開発され、多くの先住民がその地を追われました。アフリカでは貧しい人々が採掘場で仕事をしています。危険はないと言われていますが、そんなはずはない。ニュースになっていないだけです。


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ウラン鉱石



争奪戦


ウランの高騰も容易に想像出来ます。これだけ人口が増え、豊かな人がますます増えれば、電力需要は高まるでしょう。中国やインド、アフリカなどでは圧倒的な電力不足に陥る可能性があるわけで、今後、どんどんと原発を建てるのではないか。

そうなると、天然ウランをめぐる争奪戦が始まります。競争は市場価格の高騰を招くでしょう。天然ウランは有限ですから、その数が少なくなればなるほど、さらに高騰します。

日本では、原子力発電が動いていることで電力料金が抑えられているといった話を時々聞きますが、それは表面的なコストで算出したものに過ぎません。天然ウランの高騰、さらには廃炉作業などまで見越した場合は、電力料金は一気に跳ね上がるでしょう。


夢の再処理技術


福井県には「もんじゅ」と呼ばれる施設があります。この施設は、原子力発電によって生じたウラン混合酸化物やプルトニウムを再度燃料として用いるための研究施設であり、商業用原子炉とは異なります。

しかしこの技術が夢のまた夢の技術で、ほとんど先が見えない。一昔前には2000年頃には完成する技術と言われていましたが、全く出来ていません。今では2050年とか、2100年ぐらいまでかかるのではないかと言われています。

高騰する天然ウラン、そしてまだ実現出来ていない核燃料の再利用のことを考えると、再稼働させて良いものなのか。長期的観点から慎重に検討していく必要があると思います。




西鋭夫のフーヴァーレポート

2016年3月上旬号「忘れ去られた福島」− 8




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。