アメリカ帝国の最期

by 西 鋭夫 December 6th, 2018

アルカイーダとの戦い


そして、世界大国アメリカの栄華が続く。富国強兵アメリカに楯突く国はもはや存在しない。だが、歴史は不幸な出来事で大きく変わってゆく。二〇〇一(平成十三)年九月十一日の朝、イスラム教徒のテロ集団がアメリカの心臓部を攻撃した。世界中がこの惨事を見た。

「アフガン戦争」の始まりである。アフガン戦争はこれからさらに長期戦となり、米特殊部隊と CIA武装スパイたちがアルカイーダを地の果てまで追いかけ、殺すであろう。だが、無政府状態のアフガニスタンで、三〇年前のべトナム戦争の悲劇を繰り返すかのように、米軍は長期駐留を強いられる。

第二次イラク戦争で米国が圧勝したが、イラクを占領して「アメリカ民主主義」を植えつけるために、彼らは何十年間イラクに駐屯するのだろうか。敗戦日本に民主主義を植えつけるため、米軍が一九四五年に日本に上陸してから六〇年の月日が過ぎたのに、日本が民主主義国になったのに、彼らはまだ駐留している。


東洋の砦・日本


日本はアメリカ帝国の最前線という「東洋の砦」であり、帝国が僻地を治めるために物資と税金と兵士を差し出す任務を負わされている。帝都ワシントンの意思・命令に背く国々は征服される。日本人は忘れがちであるが、日本はアメリカに征服された国なのだ。

強い帝国が侵略する時には理由も必要ではない。アメリカは「傲慢」とか「横柄」とかの観念にとらわれてはいない。帝国は、大きく強くなればなるほど自己中心的になり、海外諸国がいかなることを望み、努力しているかに関心を示さない。この無関心が帝国の命取りとなる。


帝国の命運


大帝国の崩れは、僻地で反乱が起こり始める時である。アメリカ帝国に搾取され、無視された国々が、手を組んでアメリカに反抗する。テロ・ゲリラで反抗する。帝国の栄華の中で育った若者たちが僻地で戦うのはイヤだと言い出し、従軍義務を放棄する。僻地は帝都の命令を無視し、 独立してゆく。帝国の戦闘心は低下してゆき、歴史の鉄則通り、興亡のうねりに逆らえず衰退してゆく。

大英帝国は三〇〇年、フランス帝国は一五〇年、ソ連帝国は七〇年、日本帝国も七〇年で「帝国」が終焉した。歴史上最大で最強のアメリカは、帝国として振る舞いだしてまだ一〇〇年である。「砦・日本」はこれからもアメリカ帝国の領民として生きてゆくのか。

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西鋭夫著『日米魂力戦』

おわりに -3




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。