東京支店での経験
ニューヨークから東京支店に異動になったときは大変でした。アメリカ資本の大企業です。いいお金をもらって、俗にいう高級マンションにも住みましたが、もう毎日のように上司に色々なことを言われました。「おい、お前はなんで机に座っていないのだ」、そんな内容です。仕事をするのに、きちんと机に座らなければいけない。意味がわかりません。
「何をしたか」「どんな仕事をやってのけたのか」「期限は守ったのか」ではないのです。全てに規則がありまして、どういう形でやったのかが重要なのです。毎日のように言われたのは、「西、お前は座ってそれをやったのか」ということ。タイプライターもコンピュータもない時代です。おかしいと思いますか。
その会社にいるほとんどが日本育ちで、国外に出たことがほとんどありません。二五、六歳からダーッと働きだして、そして五、六〇歳まで会社にいる。そういう人は、できる人ほど相当の嫌がらせを体験されていると思います。
羨望から嫉妬へ
男の嫉妬から逃れる方法はあるのか。企業にいると難しい。しかし大学では可能でした。大学で嫉妬から逃げる方法は、与えられた授業をきちんとやることです。きちんとというのは、休まないということです。
しかし嫉妬はさまざまなところからやってきます。例えば、私は本を書きまして、二、三冊、有名になりました。それで一つの天井を突き抜けたと思ったのですが、有名になったために、余計に腹が立つのです。
ほかの教授が私を徹底的にいじめたいと思ったのは、おそらく私の授業に関するものでしょう。私は一、二年の英語のクラスと、国際問題を教えました。それで百人ほどいる西のクラスだけが、九〇分間シーンとしているのです。ほかのクラスを覗いてみるとギャーギャーと騒がしく、先生はそこで何かを話しています。
私のクラスは全く異なります。履修を終えた学生たちも、単位はないけどいわゆる聴講という形で授業に来ておりました。そしてみんな後ろに立っていました。それで三年、四年になるとゼミになります。ゼミの先生の所へ行って話している時に、「西先生のクラスはどうのこうの」という話になる。そうするとそれを聞いた先生は、もう西を出来るだけ早く大学から追い出してやろうと思うのです。
女性の苦悩
では、女性はどうか。女性が男性から何か嫌なことをされたり、言われたりした場合は、「男女差別」だと言って逃げることができる。しかし、同性からの嫉妬はそうはいかない。
女性で才能のある人が会社にいると、それに嫉妬するのは女性です。女性の敵は女性なのです。男が女を差別することは今ではほとんどなくなりました。社会的に大問題になったからです。しかし、表に出ていない同性の嫉妬とそれよる嫌がらせは山ほどある。

私が女性だったら一番怖いのは、出来ない女性上司を持つこと、あるいは出来ない女性の部下を持つことです。思い当たる節がある人は、非常に不快な経験をされたのではないかと思います。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2022年8月下旬号 出世と人事-2
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

