司令塔は必要か

by 西 鋭夫 September 7th, 2026

国際卓越研究

国立大学の統合が進んでおります。その一方で、二〇二二年には「国際卓越研究大学法」という法律が制定されました。この大学に認定されるのは数校程度とされ、一校あたり年間数百億円規模の予算が投入されることになる。初回の公募には一〇大学が申請とのこと。これほどの予算が投入されるということは、今後、日本の大学は変わるのか。

皆さん、基本的に、このような発想で大学が良くなることはありません。これはつい最近の話ですが、元東大勤務の五〇代の先生とお話しをしました。彼は東大が嫌になって、有名私立大に移られました。私はそこで、「先生、東大の大きな問題は文科省ですか」と訊ねました。すると、この先生は私の顔をじっと見て、ニタッと笑って、「そうなんです」とおっしゃいました。

一校あたり年間数百億円規模の金を出す。そうすると、この金に何の縛りがついているのか。「金を出すから口を出す」です。いわゆるトップの大学でしょうけれど、優秀な教授がいるところに、文科省から「あれをしろ、これをしろ」と口が出てくるのです。

 

報告地獄

日本では、京都大学のノーベル賞をもらわれた山中先生にも、日本は「先生、頑張ってください」と多額の研究費を出しました。もちろん、研究費を受け取れば、申請や報告の仕事も付いてきます。

皆さん、こうしたレポートが煩雑になると、「なぜこんなレポートを書かなければいけないのか」となり、それだけ自分の研究をする時間がなくなっていくのです。山中先生は京都大学におられますが、一方で、アメリカでも研究室を主宰しておられます。アメリカには、民間から研究に大きなお金が入る仕組みがあるのです。

先の文科省の話ではないですが、日本の場合は金を出したら、レポートを出せ。金が欲しいなら、綿密な研究計画書を書いてこい、という世界です。研究の質や内容というより、それをどう見せるかが重要になります。ここで挫折し、お金をもらえず、奨学金もなく、蓄えを浪費し、研究職への道を断念する方々が大勢おります。

 

支配

フォロー・ザ・マネー(Follow the Money)と私はよく言いますが、お金の流れを追っていくと、政治家や財界に行き着く。大学は補助金というお金を貰えば貰うほど、自分たちの首を絞めることになります。

学問の自由が失われ、大学は政財界や官僚に支配されてしまうのです。日本の大学も、大学教授も貧乏です。教授でお金持ちがいたら、最初に疑われるのは「裏口入学をお手伝いしたのか」です。それほどの貧乏。そのため、日本の大手の企業や銀行などが「お金を出しますよ」と言ったら、ホイと乗っていってしまう。

そうすると契約書が出てきます。企業との共同研究ですから、当然、企業側にも研究の目的があります。もちろん最初のうちは興奮していますからサインします。そこから一〜二年経つと、「先生、出来ましたか」と来る訳です。「え、何が出来たのですか」と聞くと、すなわち有益な研究、「先生、会社で使えるような、役に立つ研究結果を出してください」と言う訳です。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
2023年9月下旬号 大学崩壊-2

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。