感動のある学び

by 西 鋭夫 September 24th, 2026

感化する力

教育は教師の「感化力」、すなわち感動させる力にかかっている。すべてはそこにある。

私は一年間だけですが、幼稚園に行きました。そこでの経験を今も覚えております。先生は若い、おそらく二一〜二二歳ぐらいでしょうか、素晴らしい先生でした。どんな経験かというと、私が暴れまくっていたので、その美しい先生が私を幼稚園の隣にあった大きな蔵に放り込むわけです。

もちろん、簡単には放り込めません。ですので、私は先生の手を持ってガブッと乳歯で噛みました。そしたら血が出るのです。それで蔵に放り込まれました。ところが、出してもらったあとの話です。先生は噛まれた場所に包帯をされていましたけれど、それについて何も言われませんでした。

皆さん、まだ五歳のガキですよ。それでも大感動です。もう憧れになりました。私はその先生の言うことはなんでも聞くようになりました。

そういう体験を学校とか幼稚園でされたことがありますか。人生が変わります。しかし、私の母も大変だったでしょう。謝りに行って、おそらく裏からいろんなものを渡していたことでしょう。

 

本を手に取る

皆さん、今はどんどんと様々な遠隔ツールが登場し、周りのものがすべからずデジタルの世界になっている。

若い人は本を読んでいるのか。おそらく、ほとんど読まなくなった。「デジタルで見ればなんでも解決だ」と思っている。私から見ると、デジタルで「すぐ」というのは、あなたの脳を通り越しているようなものです。目から入って、頭の中に残らないまま、サーッと通り過ぎていく。

ですから皆さん、コンピューターのスクリーンでいろんなものを読みますけれど、良い内容だと思ったらすぐにプリントアウトして、紙で読みなさい。

もう二〜三年前の話ですが、私の『國破れて マッカーサー』を中央公論新社の電子書籍で読めるので、「電子書籍で読みました」という人が来ました。残念ながらサインはできませんでした。そしたら次に会う時に、文庫版を持って来られたので、私はサインをしました。そこで「文庫で読むのとデジタルで読むのは大違いだろう」と訊ねたら、「はい」と元気の良い返事が返ってきました。

皆さん、何度も言いますけれど、本はこういう形で読みなさい。便利か不便の世界ではないのです。皆さんの頭脳を育てるためです。

 

専門学校の強さ

企業の立場から見ると、オンライン教育で大学を卒業した「コロナ世代」を採用する価値があるのか、という話になってきます。企業は、すぐにでも働ける人材を欲しがっている。社員教育に費やす時間とお金にも限りがあります。

現在の大学教育で、企業が求めている人材を確保することが出来るのか。もちろん出来ない。

ところが「人が足りない」ということで、もう熊手でかき集めるような感じです。まず確保して、うちのところでトレーニングするということですね。皆さん、日本はこの二〇〜三〇年ずっと大学を高く評価しすぎて、役に立つ専門学校を見てこなかった。

私はある専門学校グループの教育顧問をやっておりますが、そこの入学式や卒業式に出るといつも感動します。ここに入っている学生さんたちは、もう完全に使命感を持っているのです。自分がこれから歩く道をしっかり把握している。そして必死。国家試験がある仕事もありますけれども、本当に必死。それがありありと見える。

皆さん、今の大学生は、おそらく専門学校の学生にズタズタと負けていきます。私が知っている専門学校でも、大学を四年間で卒業した後に、改めて専門学校に入ったという人が増えています。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
2023年9月下旬号 大学崩壊-7

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。