明治天皇と靴

by prideandhistory_admin January 1st, 2023

From: 岡崎 匡史
研究室より

久しぶりに革靴を履いたら、ふくらはぎが筋肉痛。
ベッドに横になったら、足がつってしまった。

一日の大半をパソコンの前に座って過ごしているので、明らかに運動不足である。

自分の足に合わない靴を履くと、靴擦れを起こしたり、外反母趾、ときには頭痛や耳鳴りをもよおすことさえある。

ハイヒールを履くことの多い女性は、靴に悩まされている。

文明開化の華やかな鹿鳴館時代、ダンスパーティーに参加していた貴婦人たちは、履き慣れない靴に苦しんでいた。それでも、雪駄や草履から、革靴への履き替えは、西洋化への象徴となった。

着物と洋服


令和の日本では、着物を着て会社に通勤している人は見かけません。スーツを着ている。

服装が自由な会社に勤務していても、着物を羽織ろうとはしない。単純に、洋服の方が便利だからです。

明治に入り、欧米列強の文化が日本に押し寄せ、日本人の生活様式も西洋化していきました。

その大きな先駆けは、日本の軍隊です。軍服もフランス陸軍を見習い、革で作られた軍靴を履くようになる。

鹿鳴館の女性が西洋の靴に悪戦苦闘したように、軍に徴兵された男性も軍靴に苦慮していた。

散髪と髷


時代は大きく変わろうとしていたが、人間はすぐに変化に対応できるものではない。

明治天皇ですら、散髪をすることに抵抗を示した。なぜなら、髷(まげ)を結うことは、東アジアでは文明人の象徴と考えられていたからである。髪を結わない人間は、野蛮人(夷狄)という時代精神が長らく続いていた。

また、身分の高い人間は、顔に白粉(おしろい)を塗り、歯にはお歯黒をしていた。1870(明治3)年になり、明治天皇は皇族と華族に対してお歯黒を禁じる。

それでも、明治天皇は髷を切り落とすことをためらっていた。そのため、足下の靴から西洋化を取り入れていく。

明治天皇が「ご断髪」されたのは、1873(明治6)年になってからである。


ー岡崎 匡史


PS. 以下の文献を参考にしました。
・稲川實『西洋靴事始め』(現代書館、2013年)

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