国防長官の辞任

葛藤

３０分後、ジョンソン国防長官は、アチソンを電話で呼び出し、「大統領の命令には意味がない。マッカーサーの電文は既にＡＰ通信で公になっている」と愚痴をこぼした。

アチソンは、「ルイス、大統領の命令が無意味かどうか私と議論するなよ。私は、大統領があんたに命じたのを聞いた。あんたは、やりますと言ったではないか。無意味かどうか関係なく、やるべきだよ」と慰めた。

ジョンソンは苦しみ、アチソンとハリマンに何度も電話をかけ続けた。アチソンは、とうとうジョンソンと話すのを拒否した。

ジョンソン国防長官（中央左）とトルーマン大統領（中央右）

板挟み

３日後、８月２７日、シカゴ全国大会の前日、ジョンソンはアチソンに電話をし、

「もし大統領が心から望んでおられるのなら、マッカーサーはその手紙をひっこめると言ってきておるが、マッカーサーは自分がどういう誤りを犯したのか見当もつかないとも言っている」

「マッカーサーは、自分の手紙は単にアメリカ政府の明白な政策を繰り返しただけで、自分が説明すれば大統領の理解はえられると思う、と言っている」

と伝えた。

マッカーサーの威信

ジョンソン国防長官はどうすべきか、まだ決心がつかない。マッカーサーの威信に圧倒され、国防長官でさえ畏縮しているのだ。

ジョンソンは、「私は、どうすればいいのだろうか？」とアチソンに尋ねた。

「大統領の命令を実行すべきだと思うよ」とアチソンは答えた。

８月２８日、シカゴ退役軍人全国大会の朝、マッカーサーの電文は撤回された。

『ニューヨーク・タイムズ』紙は、驚きを交え、マッカーサーに命令できるのは大統領だけだ、と報道した。２週間後、９月１２日、ジョンソン国防長官は辞任した。