アメリカの利益最優先

by 西 鋭夫 February 2nd, 2016

腹心・マッコイ少将


翌日、マッコイはマッカーサー宛の個人的返信案を書いた。ビンセントがそれに手を入れ、バーンズが「訂正通りOK」とサインした。

「私(マッコイ)は、あなたが直面しておられる困難をはっきりと認識しております。国務省、陸軍省もこのことをよく理解しております。我々一同は、あなたが確立した政策、および極東におけるアメリカの重大な国益を守るというあなたの決意に同意し、あなたの立場を守る覚悟です」

マッコイは、極東委員会に検討する権限があることも伝えようとする。

「我々の見解はあなたの見解と一致しています。つまり、委員会は新憲法案がポツダム宣言と降伏文書に反しない限り、あなたの政策に口を出すべきではないということであります。......ここでもう一度お伝えしたいことは、私は絶えず、アメリカの利害を念頭におき、あなたを護るために全力を尽くすつもりです」


149.jpg

極東委員会への報告

マッコイ委員長が極東委員会を代表して、マッカーサーの「横暴」を叱責するはずだった。これでは叱責どころか、マッコイとマッカーサーの間に陰謀が成立したようなものだった。

それ故、マッコイは、極東委員会がマッカーサーに質問状を出した4月12日から一カ月半も過ぎた5月29日に、極東委員会に経過報告をする。

「彼(マッカーサー)は極東委員会と緊密な連絡をとり、理解し合う必要については十分に認識している。彼はできるだけの努力をする用意がある。......しかし、彼が憲法改正問題に関して、彼の代理として、部下をワシントンへ派遣することはできない。なぜなら、彼はこの問題に個人的に関わっており、彼の見解を代弁できる者は他にいないからである」

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

人気の投稿記事

ミャンマーと北朝鮮

アジア最後のフロンティア 北朝鮮の今後の動向を予測する上で、東南アジアにあるミャンマーは一つのポイントです。ミャンマーはアジア最…

by 西 鋭夫 November 8th, 2021

中朝関係の本当の姿

水面下でのつながり 中国が北朝鮮の核実験に対して、断固反対すると声明を出しました。しかし、中国の習近平政権と、北朝鮮の金正恩政権…

ミサイル / 中国 / 北朝鮮 / 核実験 / 米国

by 西 鋭夫 November 1st, 2021

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。