最高司令官の権威
マッカーサーの怒りはまだおさまらない。
極東委員会は、
「何ら行政権限をもっていない」
「それは最高司令官(マッカーサー自身)のみにあるのだ」
「同委員会は、最高司令部あるいは日本政府のとるいかなる政策にも、事前承認を要求する権力も持っていない」
「最高司令官の権威をこのように侵害することは......最高司令部の権威を脅かし、日本政府と国民を混乱させようとするものである」。
怒りは続く。
「大切なことは、日本におけるアメリカの影響力と権力の保持である。日本におけるアメリカの優勢......を崩壊させようと計画的に集中攻撃が行なわれている。それは極東委員会の中に、外交と同志愛という衣をつけ、はっきりと存在している。私はあなたがアメリカ政府の立場、政策を守るため、拒否権を含むあらゆる方法をとることを切に要望する」
ビンセントの進言
マッコイ少将は直ちに国務省極東局のジョン・C・ビンセントに相談した。
ビンセントは、4月19日、バーンズ国務長官にメモを書き、
「⒜マッカーサー元帥は憲法草案に承認を与えるべきでなかった ⒝彼の弁護は当を得ていない」
「(日本でのアメリカの権力保持について)マッコイ少将はマッカーサー元帥同様、責任を十分自覚しているものと確信します。私もそうです。しかし、同時に、留意しなければならないことは、日本占領は連合国全体の責任であることがすでに合意されている点であります」
ビンセントは進言する。
「マッカーサー元帥に次のことを保証すべきです。我々は彼の行政最高責任者としての立場を守る必要について十分認識していること、日本におけるわが国の影響力保持の重要性も意識していること、であります。......極東委員会の3月20日の政策決定(選挙延期)は、モスクワ協定違反ではないと率直に指摘すべきでしょう」
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。