NATOの命運

by 西 鋭夫 March 12th, 2026

原因はどこにあったのか

私は最初から、ヨーロッパのNATOは、ソ連が共産党だった時代に出来たものですから、NATOはもうほぼ終わっていると見ていました。軍事組織としては終わっていて、アメリカが入ってこなければ、もうNATOの意味がないわけです。トランプさんがNATOの会議に出て、「おまえたちは金を出さずに、アメリカがおまえたちを守れなどと、こんな不公平でバカな話はあるか」と言い出した。それを聞いて、NATOがお金を出し始めた。

プーチンさんの方は、「NATOは何を張り切っているのだ、このやろう。何でウクライナにどんどん近付いてきているのだ」と思っていますし、ウクライナもウクライナで、NATOに入りたいと言っているのです。

そんなものを許すわけがありません。ですから、このような戦争になったのです。皆さん、この戦争は大きく報道されていますが、現状ではまだ非常にスケールが小さい。死者も少ない。皆さん、日本は何百万人死んだのですか。アフガニスタンやベトナム戦争はどうだったでしょう。そうした戦争に比べると、この戦いは非常にスケールが小さいのです。

端的に言えば、近所喧嘩のようなものです。ただし、けんかを仕掛けた相手がだいぶ大きな巨人、ロシアだったわけです。ウクライナは、口は達者だが力がない。金もない。武器も持っていない。

 

悲劇の始まり

ウクライナの悲劇は、ソ連が崩壊してロシアになり、ウクライナが独立した時にありました。その時、ソ連の原子水素爆弾を1,900発、持っていたのです。ウクライナが「持っていた」のです。これは大騒動でしょう。

そこでアメリカとロシア、そして英国がしゃしゃり出て、「ウクライナさんよ、おまえたちはそんな危険なものを持ってはいけない。絶対に俺たちがおまえたちを守ってやる」と約束したのです。ロシアも約束しています。

それでどうなったのか。核ミサイルを取り上げたらこの戦争です。取り上げていなければどうなっていたか。近所喧嘩だったとしても、ロシアはそう簡単に手は出せなかったはずです。

 

ロシアの狙い

では、プーチンさんは何を狙っているのか。実はもうウクライナのことなど、ほとんど考えていないのではないかと思います。なぜ長引かせているのでしょう。ズルズルと引きずって、ウクライナではゼレンスキーさんが悲鳴を上げてあちこちに「助けてくれ、助けてくれ」と言っていますし、アメリカも今、国の中が大騒動です。ヨーロッパもこれから冬が始まるという時に、エネルギーをどうしようと、そんな状況です。

原発をやめたドイツなどは石炭を掘り出しました。石炭に頼るのは脱炭素化、地球温暖化防止の逆を行っているのではないですか。背に腹はかえられない。ドイツが石炭を掘り出せば、よその国も堀りだしますよ。

プーチンさんから見ると「だから言っただろう、おまえたち。バカだな。ひざまずいておいで。天然ガスをあげるし、石油もあるぞ。小麦もある。欲しいだろう」。こんな世界です。そうすると日本はどうするのでしょうか。私はもう、完全に「ど阿呆!」と思っています。なぜ口を出すのか。手を出すな。足を出すな。ブーメランをプーチンさんに投げて、全部私たちの頭にはね返ってきております。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
プーチンと核兵器(2022年6月下旬号)-2

 

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。