独裁者の論理と北朝鮮

by 西 鋭夫 June 8th, 2026

なぜ兄を殺したのか

金正男がマレーシアで暗殺されました。北朝鮮の女性工作員と思われる二人に毒物で殺された。このニュースは世界を驚かせましたが、私はそれほど驚きませんでした。というのは、独裁者の世界ではこれは極めて普通のことだからです。

独裁者というのは、競争相手を生かしておいたら自分が危ないのです。だから必ず殺す。これは冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが、歴史を見ればずっとそうです。中国でも王朝が代わるたびに皆殺しです。

日本でも戦国時代はそうでした。源平合戦でも同じでしょう。平家が勝ったときに、源氏の子どもを殺さなかった。まだ5歳や10歳の子どもだからといって生かした。それが後で復讐されて、平家は滅びるわけです。あのとき殺していれば、源氏は全滅していた。

つまり、独裁者の世界では「生かしておく」という選択肢が一番危険なのです。

 

殺さなければ殺される

北朝鮮はまさにその論理で動いています。親子、兄弟、おじいちゃん、おばあちゃん、それから孫も、いとこも、姪も、全部対象です。競争相手になり得る血筋はすべて消す。残酷かと言われれば残酷です。しかし、そこまでしなければ自分が殺される世界です。だからやる。そこに感情はありません。

金正恩は叔父も銃殺しています。それも普通の銃ではない。飛行機を撃ち落とすための機関銃で公開銃殺です。そこまでやる。そこまでやらないと、自分の政権を守れないということです。しかも今の金正恩は、アメリカからも、ロシアからも、中国からも、韓国からも圧力を受けている。その中で独裁を維持しているわけですから、ある意味で非常にしたたかです。

 

暗殺が示唆すること

殺し方もすごい。映像がありますが、女の人が後ろから近づいて、プラスチックの袋をかぶせる。そして毒薬をスプレーする。青酸カリの10倍とか20倍とかいう話です。

ああいうことを計画して実行する。北朝鮮には飛行機を爆破したグループもいます。そういう国が日本のすぐ近くにある。しかも長い間、日本と貿易をしていた。これは日本が相当ボケていたのか、それとも北朝鮮が相当賢かったのか。


そして今回の暗殺にはもう一つ意味があります。殺された長男は中国側だった。中国が金を出して、世界中で生活させていた。その人物を消したということは、レジームチェンジ、つまり外部の力で政権をひっくり返されることを恐れたということです。だから先に殺した。これは恐怖の裏返しです。つまり、北朝鮮はそれだけ追い詰められているということでもある。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
安倍トランプ会談の真相(2017年2月下旬号)-7

 

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。