ゴーン氏の不正疑惑

by 西 鋭夫 January 19th, 2023

作られた犯罪者像

カルロス・ゴーン氏の不正疑惑が連日のように報じられております。彼の脱税行為が事実なら、厳罰に相当するのでしょう。しかし、それが確定していない中、日本社会の対応はあまりにも酷く、国際社会の常識からは大きく外れております。

日本では今、多くの人がゴーン氏を悪者扱いしているようですが、彼は裁判で有罪になったのですか。裁判までは推定無罪でしょう。「何かやったのではないか」と犯罪者としてのレッテルを貼り、必死になってその証拠を集めております。

その証拠集めをやっている時に、日本のマスコミも皆さんも、寄って集りながら「おまえがやった」「おまえは犯罪人だ」と言っているような印象です。そんなことを社会全体から言われたら、弁明もできませんし、その機会さえ公正、平等な形で確保することは難しいでしょう。

 

拘留所内での処遇

ゴーン氏が何をどうしたのか、私は詳しいことは知りません。新聞を読んでも、報道を見ても、いわゆる「意見」ばかりで、お金の流れを客観的にかつ分析的に捉えたものはなかなかありません。

ただ、60日間も寒い独房に入れられて、毛布一枚で過ごしていたという事実が本当なら、私は大きな怒りを感じます。奥さんが7キロもやせたと言っておりました。あの男はメタボではないのです。私みたいなメタボではないのですけれど、ガバッと痩せておられ、「毛布をもう一枚ください」と言っても貰えなかったといわれています。

日本の皆さんはそんなことをするのですか。それを許すような国民なのですか。社長や政治家の先生方の中には悪いことをした方々がおりますが、同じように扱われていたのでしょうか。

 

口を閉ざすもの

息が止まる寸前の日産をゴーン氏が救い、世界一の自動車販売の会社にしてくれました。ついでに彼は、不正まみれの三菱自動車も救いました。今の日本社会のあり様は、何か大きく間違っているのだと思います。

ゴーン指揮下の日産については「20年間の独裁体制」などと言われております。私はゴーン氏に同情するのではありませんが、彼のおかげで出世した人たちは今何をしているのだろう、何を考えているのだろうと思います。自分たちが権力を握ったので、ゴーン会長はもう必要ないなどと考えたのでしょうか。

そう考えるだけなら、むしろ優しいのかもしれません。現実はより悲劇的で、20年間ゴーン氏と一緒にやってきた人たちは自分にも悪行があるので、それをなんとか隠したいと考えているかもしれません。悪行が明るみに出る前に、権力側に擦り寄って取引を行ったのではないか、とも考えられます。このあまりにも唐突で、凄惨な仕打ちには何か裏があるのではないかと思うのです。

西鋭夫のフーヴァーレポート
2019年1月下旬号「日本独立への道」-1


この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。