和食に手が届かなくなる日

by 西 鋭夫 October 25th, 2021

スタンフォードのお寿司屋さん


私はいろいろな食べ物を食べますが、一番好きなのは和食です。アメリカでも和食は大人気です。しかしアメリカの和食は高い。日本も高いが比べ物にならないくらい高い。だが残念なことに、高くとも、本当に美味しい和食はなかなかお目にかかれない。

例えばスタンフォード大学の近くにあるお寿司屋さんですが、家族で行って握りずしを注文しました。そうすると、どうも見た目が美しくないのです。はしを持ってお寿司を取り上げ、しょうゆにちょっとつけようと思ったが矢先、シャリはすぐに土砂崩れを起こして、バラバラとお皿に落下しました。

よく見ると握り方を知らないから、ただ固めた、という感じです。シャリも1週間ぐらい経っているのではないかという感じです。高いお金を払って、すし職人2人、若いお兄ちゃんに「ご馳走様」と言ったら、きょとんとしていました。日本語を知らないのです。東洋人の顔をしていたら和食のすし職人としてこのスタンフォードで仕事がある。見せかけですが、アメリカで和食はそれほどの人気なのです。


和食の美しさ


世界中で人気のある和食ですが、アメリカはもとより、世界各国どこへ行っても、さらには日本国内であっても、本物の和食に出会うことが一気に難しくなりました。

まず日本人ですが、一般的に和食をほとんど食べなくなりました。ピザやスパゲッティを食べたりしています。中華料理もあるだろうし、フランス料理などもあるでしょう。でも皆さん、和食と比べてみて下さい。

盛り付け方、飾り付けがどれだけ美しく、美を追求してきた食べ物かが分かります。美だけではなく、栄養という点でも抜きん出て優れています。美と健康の二つを追求するこの美学は世界的ブランドです。これを売るべきです。安くしなくたって良い。


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日本の美を継承する


接待する必要がある時、日本では大抵和食です。スパゲティで接待などありません。それほど日本の和食は美学の世界です。おいしいし、私たちは目でも食べますから、美しさを追求した和食を目の前にすると、畏敬の念をも持ちます。

その和食が危機に瀕しております。問題の一つは食材です。遺伝子組み換え食材で、本物の味を出すことは出来ない。和食には、日本の優れた農家が作った農作物が必要不可欠です。日本の漁師たちが目利きした魚が、酪農家たちが丁寧に育てた牛や豚、鳥がどうしても必要です。

私は和食を応援しています。ユネスコなどに認められなくても、日本人が認めていますから放っておいたらどうでしょう。登録するとお金だけ取られるでしょう。



西鋭夫のフーヴァーレポート

2016年9月下旬号「アメリカの食文化支配」-8




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。