元CIA高官の北朝鮮分析

by 岡崎匡史 March 2nd, 2019

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講義メモ

2019年2月22日(金曜日)、スタンフォード大学アジア太平洋研究所に於いて北朝鮮に関するレクチャーが行われた。参加者は数十人と報道関係者。

講師は、アンドリュー・キム(Andrew Kim)氏。

彼は昨年の2018年12月まで、約28年間にわたり米中央情報局(CIA)に務めていた高官。CIA韓国支部長をはじめ、日本やアジアでも任務をこなし、CIA内に設立された対北朝鮮専門組織「コリアミッションセンター」の所長を歴任。CIAと北朝鮮との交渉を担う重要人物とされてきた。


金正恩とポンペオ国務長官


アンドリュー・キム氏は、ポンペオCIA長官(2018年4月より国務長官)の訪朝に常に同行してきた。

2018年4月、ポンペオCIA長官は平壌を訪れ、金正恩朝鮮労働党委員長と会談。その際、ポンペオ長官が、北朝鮮は本当に核兵器を放棄する意志があるのか念押ししたところ、金正恩委員長は、次のように答えたという。


I'm a father and a husband. And I have children...And I don't want my children to carry the nuclear weapon on their back their whole life.

「私は父親でもあり、夫でもある。そして子どもたちもいる。核兵器という重荷を、私の子どもたちに一生背負わせくない。」

ロードマップ


アンドリュー・キム氏は、私は予言者でもなく、現在の施策はわからないと前置きをしつつも、北朝鮮の非核化へ向けた "当時"のロードマップにも言及した。非核化を実現するために、アメリカが支払わなければならない代償についてだ。

現在、世界各国にある北朝鮮の銀行口座が凍結され、北朝鮮は外貨を稼ぐことに支障をきたしている。今後、米朝交渉が進展すれば、アメリカは北朝鮮の金融緩和を実施すると思われる。さらに、北朝鮮と米国企業との合弁事業に着手することにもなるだろう。

経済の結びつきだけでなく、政治面でも、北朝鮮の米国入国禁止措置は見直しを迫られる。トランプ政権では、外国人の入国規制が強化され、北朝鮮からの訪問者も限られている。完全な非核化の前段階として、人的交流と対話が促進されることになるだろう。


北朝鮮とキリスト教


文化的交流に関連して、北朝鮮の「信教の自由」について興味深い言及があった。北朝鮮におけるキリスト教宣教師の活動に関してだ。

北朝鮮の建国の父は金日成(キム イルソン・1912〜1994)。金日成の母親で神格化されている康盤石(カン パンソク・1892〜1932)は、クリスチャンであった(註:現在、北朝鮮はキリスト教を弾圧しているが、かつて平壌にはキリスト教が深く根付いていた。平壌には教会があり、宣教活動も活発に行われ「東洋のエルサレム」と呼ばれていた時代があった)。

アンドリュー・キム氏の指摘を考慮すると、「信教の自由」と宣教師の活動に注目して北朝鮮の動向を追うことは、変化の兆しを察知する手段の一つであるといえよう。


ー岡崎 匡史

この記事の著者

岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。

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岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。