解放軍・共産党

自由の戦士解放

長く弾圧されてきた共産党は、この指令を輝かしい新世界への宣言として歓迎し、占領軍を「解放軍」と呼ぶほどだった。

１０月１０日に約５００名の政治犯が釈放された。

その日、共産党は、東京・飛行館ホールで「自由戦士出獄歓迎人民大会」を開いた。事実、刑務所から釈放されたばかりの日本共産党員たちは、第一生命ビル（総司令部）の前で、「解放軍司令官」マッカーサーに聞こえよとばかりに「万歳」の三唱までした。


何と、皮肉なことか。

マッカーサーは勝ち目のない絶望的な戦いでも、「バンザイ」を叫びながら突っ込んで来た勇敢な日本兵に身が震えるような恐怖を体験させられてきたのだ。

彼は２度と、それも東京で、「バンザイ」は耳にしたくなかったのではなかろうか。ましてや、共産党員たちから。

エマーソンの証言

府中刑務所から釈放された共産党の指導者、志賀義雄（しがよしお）は、共産党員の釈放に尽力したのはジョン・エマーソンだったと言った。

エマーソンは、１９７８年、フーバー研究所で私に「志賀の説明は、作り話！」と強く否定した。

普段、おっとりとしていて、感情的な物の言い方をしないエマーソンは声を震わせ、「この出鱈目（でたらめ）の志賀発言のため、私は１９５０年代にアメリカ国内に吹き荒れたマッカーシーの赤狩りに引っ掛かり、大使に任命されることはなかった」とも言った。

志賀は、東京帝大卒業後、共産党に入党した。１８年間服役。１９４６年、衆議院議員になり、当選６回する。

「志賀の説明」は、まんざら出鱈目でもない。

エマーソンは終戦直前、中国に渡り、野坂参三や他の日本共産党員たちと会い、対談をしている。その直後に、志賀や徳田は解放されたのだ。

一方、日本の保守派は、天皇大権が崩壊し、日本は無政府状態に陥るのではないかとの恐怖に駆られていた。