少子化
日本の大学は、生き残ることが出来るのか。現在、日本の大学進学率は五〇パーセントを超えており、二人に一人は大学で学んでいます。しかし、大学の教育水準はどうなのか。さらに昨年の私立大学の定員割れは四七・五パーセント。これで経営が成り立つのか。
国立大学に目を向けると、東京工業大学と東京医科歯科大学が二〇二四年度に統合する予定です。その名も「東京科学大学(仮称)」。大学再編成の波が起きております。大学の倒産、そして大学統合の波は、ますます大きくなっていくのか。
皆さん、これから想像を絶する状況になっていきます。まず、現実として、小・中・高、そして大学に進む若者たちの数が毎年ドカッ、ドカッと減っています。私はよく電車に乗りますけれども、結婚した男女が子どもを三人もうけている状態は見たことがありません。街を歩いても、三人連れている人は見たことがない。二人はあるが、多いのは一人です。
そうすると、人口が減っているのに反比例して、この学生人口を多く取らなければいけない。しかし、その一方で新しい大学が出来たり、また、今ある大学に新しい学科を作ってしまったりするわけ。すなわち、もう恥も外聞も何もなく、取り合いです。

競争激化
取り合いになったとしても、日本の学校を見ると、旧帝国大学、今の国立大学や県立大学、私立大学と、その数は私が学生の頃の三倍以上に増えています。全て合わせると、日本には今、八〇〇ほどの大学がある。私が学生の頃は学生が多かったので、何とかもっていましたけれど、そこからグワーッと減った。ここで小・中・高の学生人口がドッと減ると、今ある大学は、もう統廃合しなければ生き残っていけません。
今度は、これをするたびに教授たちの職も減っていきます。博士号を持っていても、就職先がなかなかない。たとえば、あの有名な早稲田と慶応は、早慶戦という大戦争を長年やって、みんなが楽しんできましたが、あの二つが後20年、30年ぐらいで統合して早慶大学になってもおかしくない訳です。今こんなことを言うと、早稲田や慶応の皆さんに殴られますけれど、それほどの危機的状況です。
大学側もそれを自覚しております。大学はたくさんありますが、受験生から見ると「私が行きたい所はここ」と、大体決まっています。滑り止めで二〜三校受けますが、志願校に合格できたら、滑り止め校には進学しません。基本的には有名校に、有名国立大学に行きたいので、たとえ滑り止め校には入学金を払っていても、お断りするのです。
少子化対策
日本は人口の減り方がすごいのです。なぜ減るのか。永田町はそれをもっと考えればいいのですけれど、考えてきませんでした。そして今頃になって、「人口が減った、さあ大変だ」と騒いでいる。
一五~一六年前には、すでに人口が減る危険性が統計に出てきていました。これは以前も言いましたが、ちょうどその頃、私はある長官とお話しをする時がありましたので、「長官、子どもが三人産まれた家族は、もう所得税ゼロにされたらどうですか。もう税金を払わなくてよろしいとされたらどうでしょうか」と提案したことがあります。
そうすると、この長官は私に向かって高飛車に、「西先生、お金の問題ではありません」とおっしゃいました。不思議なことを言う人だなと思い、「長官、何人お子さんがおられますか」と聞くと、「おりません」と答えました。
日本の行政はそういう感覚でやってきましたので、今頃、大騒動です。ですから、最初の質問の「日本の大学は統合しても経済的にやっていけるのか」への回答は、統合が進めば、教授だけではなく大学関係の職員さんの職も失われていく。それの受け皿はもちろん作っておりませんし、作りませんので、厳しい、ということになります。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2023年9月下旬号 大学崩壊-1
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

