法人税の破壊力
もう一つ、アメリカが持っている隠れた武器があります。それが税法です。これからアメリカは税金を下げます。法人税を10パーセントから15パーセントほどに下げるという話が出ている。
そうすると、これはものすごい力を持つわけです。大手の会社なんか、税金の額が何兆円という世界ですから、それがドカンと半分になると、当然、考えます。これ、アメリカに本社を置いたほうがいいんじゃねえか。決算をアメリカでやろうじゃないか。そういう話になるわけです。
下手をすれば、ソフトバンクも、トヨタも、ホンダも、みんなアメリカに本社を置くという話になってくる。ニューヨークに置くのか、ロサンゼルスに置くのか、それは分かりません。しかし、税金が大きく違うとなれば企業は動きます。企業はきれいごとで動いているわけではありません。どこに本社を置けば得をするのか、どこで決算をすれば税金が少なくなるのか、そういう計算で動くわけです。

本社をアメリカに置く時代
そのとき、日本政府は反対できるのか。反対する日本の政府に対して、トランプさんが出てきて、「お前、俺に何、反対してるのだ」と言ったらどうなるか。「いや、何も反対しておりません」で一件落着ですよ。そういう世界です。日本が企業を引き止めようとしても、アメリカの税制がそれだけ魅力的になれば、企業はそちらへ行く。これは十分あり得る話です。
例えばトヨタです。実際に税金が半分になると言われたら、じゃあ本社をロサンゼルスに移して、アメリカで自動車をつくりまくって売ろうという話になる。アメリカでつくって、世界中に売ることができる。そうすると、トヨタは世界を牛耳る自動車会社になりますよ。しかも「アメリカ発日本車トヨタ」です。名前は日本車でも、拠点はアメリカ。そういう時代になっていく可能性がある。
円高と農産物の圧力
これはトランプさんに牛耳られるというよりも、日本自体がこういう状態に自分を追い込んだということです。日本を含めて、アメリカを除くよその国は、みんなグローバル化、グローバル化と言っています。では、企業が「僕、アメリカに本社を置いてもいいですね」と言ったら、反対できないじゃないですか。グローバル化と言ってきた以上、企業が国境を越えて動くことを止める理屈が弱くなるわけです。
そしてもう一つは円高です。アメリカが円高を仕掛けてくる可能性は大きい。すなわち、アメリカのものを世界中で売りたい。特に日本で売りたい。アメリカの肉を買ってくれない。アメリカの米を買ってくれない。アメリカの農産物を買ってくれない。アメリカは農業国ですから、もう売りたくてうずうずしているのです。日本は肉がめちゃめちゃ高い。私はアメリカで肉が好きですから、おいしい肉を食べますけど、おそらくこちらのおいしい肉は日本の値段の3分の1でしょう。
だから、税法と円高、この二つは非常に大きい。税金を下げて世界の企業をアメリカに呼ぶ。円高を仕掛けて、アメリカの農産物や製品を日本に売る。こうなると、日本は企業の拠点でも、貿易でも、非常に強い圧力を受けることになります。
トランプさんは普通の政治家ではありません。ビジネスマンですから、こういう仕掛けを平気でやってくる。そこを見誤ると、日本はまた大きな読み違いをすることになると思います。
西鋭夫のフーヴァーレポート
安倍トランプ会談の真相(2017年2月下旬号)-4
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

