エネルギー安全保障
2019年6月13日、中東のホルムズ海峡付近にて日本とノルウェーの海運会社が運航するタンカーが何者かによる攻撃を受けました。ホルムズ海峡タンカー攻撃事件です。事件の裏には何があるのか。アメリカはイランを批判し、イランはアメリカとその同盟国を批判しました。日本は慎重な姿勢を貫きました。この事件はとても重大な出来事でした。日本にとってはエネルギー資源の確保と安定に関わる国家安全保障問題です。
この事件についてはすでにさまざまなことが言われておりますが、私はそもそもタンカーの護衛を他国に任せて良いのかと問いたい。これは「良くない」でしょう。あれは私たち日本人の生命線なのです。
日本には石油がないでしょう。そのため、石油に代わるエネルギーを求めて原発を大量に造って動かしてきたわけですが、これも非常に危ない。そんな中で日本に石油を運ぶ巨大なタンカーが来なくなったら、皆さんの生活は今の3分の1ぐらいの水準に落ちます。これはもう完全に大騒動です。
緊張の高まり
ホルムズ海峡というのは東側がイラン、西側がアラビア半島に挟まれておりまして、幅にして数百メートル程度の非常に狭い海峡です。ここを通らなければ日本に石油は届きません。しかし、その航路には海賊が出没するのです。ここにはまたイラン海軍もいて「検査する」などといって停船させる。そこで魚雷でも撃ち込まれたら、それこそ大混乱です。
日本は今、ビクビクしていますが、激怒しているのはアメリカです。つい最近、サウジアラビアの巨大油田が爆撃を受けて、火の海となりました。これはもう大騒ぎです。石油1バレル、いわゆる1樽(たる)と呼ばれる単位の価格が、アメリカで一気に高騰しました。金も高騰しました。おそらくこれから円も高騰していくでしょう。
そしてその報道のなかで、トランプ大統領が「これはイランの仕業だ」と話しました。「イランが攻撃して、サウジアラビアをやったのだ」と。さらに彼は、「銃に装填して、撃つ準備が出来たぞ」とまで発言しました。
米国はどう動くか
今、世界は「アメリカとイランが本当に戦争を始めるのではないか」と、大騒ぎになっています。ですが、これは別にサウジアラビアのために怒っているのではありません。アメリカも石油のためではありません。自分で自給自足を実現しております。
ではなぜそこまで心配なのか。サウジの石油は、世界経済の中で非常に重要な役割を果たしていることが大きな懸案事項です。つまり、もしそこが攻撃されれば世界全体が大混乱に陥るわけです。この影響をアメリカ経済はもろに受けることになります。ゆえにアメリカは躍起になっているのです。まだ決定的な証拠はありませんが、アメリカはすでに、この攻撃を計画したのは「イランしかない」と思い込んでいます。
西鋭夫のフーヴァーレポート
日本の国防(2019年9月下旬号)-4
この記事の著者

西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。