禁煙ファシズム

by 西 鋭夫 February 26th, 2024

ナチスの禁煙政策

昨年のフーヴァー・レポートでは「ヒトラーと麻薬」と題して、ナチスドイツと麻薬の知られざる関係についてお話ししました。ヒトラーが菜食主義者になったのは、姪のゲリ・ラバウルの自殺と関係していたわけですが、彼自身もまた消化器官が弱かったことが知られております。

さて、そんなヒトラーですが、実は大のたばこ嫌いでもありました。それで彼は、健康で完璧な純潔ドイツ人による社会を目指しておりましたので、禁煙と禁酒を徹底的に行いました。その政策を後世の歴史家たちは「禁煙ファシズム」などと呼んでいます。すなわち、「優生学から見ると俺たちアーリア人は非常に優れた民族である。煙や酒を体の中に入れたらその優秀さが保たれないだろう」と考えたのです。このヒトラーの一声で、ナチスドイツのお兄ちゃんお姉ちゃんたちはたばこが吸えなくなりました。



国民管理

ナチスはそれを全体主義的に、強力なリーダーシップのもとで行いました。しかしこれは裏を返せば、それほどの力を使わないと国民の健康を保つことが難しい、ということでもありました。単にたばこが嫌いで酒が嫌い、というだけではないです。「俺たちの人種、ドイツ人種を健康に純粋に保つためには、そういう不純物を体の中に入れてはいけない」ということを、力でもって実現するしかなかったのです。

ナチスはこれを政策として徹底的に実施します。職場では禁煙を推奨し、小学校ではたばこの害を教えるようになりました。違反したり、従わなかったりした場合は罰を受けました。

こうしてナチスは、仕事好きで、病気をしない、生産性の高い労働者を作り出そうとしたのです。強いドイツのためには、健康で強靭なドイツ国民が必要だったのです。

 

ナチスの医学

ナチスが行ったことを思い起こすと「残虐」「非人道的」というイメージがあります。実際、その通りであり、それは人類にとって許されないことでありました。ナチスによる様々な医学実験もそうです。

しかし、ナチスのお医者さんたちが、たばこと肺がんの関係を発見したことはほとんど知られていません。この20年後ぐらいに、アメリカとイギリスのお医者が発見したと言って大騒ぎになりましたが、「お前たちは20年、後の話だろう」と思いますね。

ナチスによる徹底した禁煙政策には医学的根拠があったのです。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
タバコ利権とファシズム(2020年2月上旬号)-5



 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。