巫王制と祭祀王制

by 岡崎匡史 March 1st, 2024

From: 岡崎 匡史
研究室より

あなたが国家や企業を治める立場であったら、どのような方法で権力を継承させるのでしょうか?

あなたが生きている間に権力を移行させるか。それとも、亡くなった際の後継者を指名しておくか。あるいは、全く決めずに時の流れに任せるのか。

後継者を決めるにしても、親族にするのか、息子にするのか、娘にするのか。世襲にする場合、長男と次男、どちらを優先するのか。それとも、血縁は考慮せずに、生え抜きの忠実な部下を抜擢するか。

大いに悩むことでしょう。

権力が入れ替わるとき、世の中は動乱が起きやすい。安定的な権力の継承は、国を司る者にとって頭痛の種でした。

巫王制

古代の日本では、どのようにして権力を譲り渡してきたのか。

邪馬台国の女王である卑弥呼のように巫女が神の意を受けて、その言葉によって政治を行う政治形態を「巫王制」(ふおうせい)と呼びます。

巫王制の場合、原始的な王制のため支配の及ぶ範囲に限界がある。さらに、巫女はシャーマンになる素質を持ち合わせ、訓練を受けなければならない。

巫王制の根本的問題は、通例、巫女は結婚しないので跡継ぎがいない。

つまり、王権の継承に際して誰が後を継ぐのかを巡って揉めることになるので、巫王制は不安定な政治形態だった。

祭祀王制

巫王制よりも安定した制度が「祭祀王制」(さいしおうせい)である。

祭祀王は、シャーマンのように特別な素質を必要としない。決められた手順に則って祭儀を執行する能力があればよい。その上、結婚をして子供を作ることができるので、王権の継承に際して世襲が可能となる。

さらに、祭祀王制は世襲を繰り返すことによって血統のカリスマ性を増して、権威づけられていく政治構造となっている。

祭祀と天皇

古代には天皇崇拝はなく、天皇は普通の人間として日常生活を送っていた。
天皇は、政治の一つの仕事として国民のために祭祀を取り仕切っていた。

天皇は「祭神」ではなく、自らが「祭り主」なので「人間」である。しかし、民衆から見れば、天皇が人間であると同時に祭りを通して皇祖神に近づき交わることから、この世における目に見える神に近い存在として崇められた。

古代の人々にとって、天皇の「地位」と「役割」は崇拝する対象であった。民衆と天皇を結びつけるものが祭祀であり、王権を維持する重要な儀式であった。だから、現在でも天皇は祭祀を重視なされるのです。


ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・津田左右吉『日本上代史の研究』(岩波書店、1947年)
・村上重良『天皇の祭祀』(岩波書店、1977年)
・村上重良『日本史の中の天皇』(講談社、2003年)

この記事の著者

岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。

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岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。