日本イスラエル関係の将来

by 西 鋭夫 December 15th, 2022

ユダヤ人

日本には様々な差別問題がありますが、日本は「反ユダヤ主義」とは無縁と言っていいほど、ユダヤ人との良好な関係を築いてきました。世界的に見てもこれは珍しいことだと思います。

きっかけの一つは第二次大戦前に遡ります。日本から中東欧諸国に送られた政府高官らはユダヤ人の働きぶりや頭脳の明晰さに感銘を受けておりました。そして、どうすれば彼らとの関係を築くことが出来るのかと、必死になって考えておりました。大日本帝国の更なる発展には欠くことのできない存在として認識されていたのです。

例えば満洲国の経済的繁栄には、圧倒的な資金を有するユダヤ資本が必要であると考えていました。そして彼らが満洲にやってくれば、やがてはアメリカ資本もそれに続くのではないか、と考えていました。

もちろん、そんな夢物語は実現しませんでした。しかしそれでもなお日本人はユダヤ人を助けようとしたのです。杉原のような外交官がいる国は稀です。

 

語り継ぐこと

当時の日本とユダヤ人社会との関係を、私たちは学校教育の中で全くと言っていいほど教えておりません。杉原のことを知っている学生もほとんどいないでしょう。なぜ日本はこのことを子供たちに伝えないのか。

この間、安倍総理は国連の国際女性会議にてトランプ大統領の娘さんにたくさんのお金をプレゼントされました。しかしイヴァンカさんではなく、イスラエルにプレゼントすべきだったと思います。

ユダヤ人は皆さん、杉原のことを知っています。安倍総理がそれをなさっていれば、さすが杉原の国のリーダーだと評価されたのではないでしょうか。外交的にも無駄ではないでしょう。ところが、彼の口からはイスラエルの「イ」の字も出ませんでした。

 

外交の要衝

歴史を知らなければ、どんな国でも良い外交はできません。政治的にも経済的にも大きな力を持つユダヤ人たちが、今もなお尊敬して止まないのが杉原千畝です。あの時代のことを考えると、杉原の勇気は尋常ではありません。誰にでもできることではありません。彼は特別な人です。

杉原のことを意識しながら、安倍さんはイスラエルに近づいていく。イスラエルに近づくとトランプさんに褒められますから、「そんなにお金を出さなくていいよ」など言われるかもしれません。

外交というと何か大ごとのように日本では考えられていますが、その内実は人間関係です。きれいごとを並べても外交関係は大きく動きません。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
2018年12月上旬号「反ユダヤ主義」-6


この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。