フォークランドを守った英国

by 西 鋭夫 July 7th, 2021

日本人の領土意識


島国に住んでいる我々は、国土を守るという意識に乏しい。国境を接する国はなく、海岸線を守ることができれば、国を守ることができると考えている。守るべき海岸線も、沖縄、九州、四国、本州、北海道、北方領土といった大きく目に見えるところだけを考えているのではないか。

そのためか、例えば日本帝国時代にドイツから取り上げた南洋諸島などが奪われたとしても、日本人は特に大きな危機意識はありませんでした。それらの島々は、接着剤で強引にくっつけたような領土という感じだったと思います。

一方で、蒙古襲来で北九州が攻撃されたとき、さらにはアメリカが沖縄を攻めてきたとき、日本人の意識はまるで異なっていました。戦い方も凄まじかった。


フォークランド紛争


ここで忘れてはいけないのはイギリスです。イギリスは1982年、「鉄の女」と言われたサッチャー首相のとき、アルゼンチンとの間でフォークランド紛争を戦いました。

フォークランド諸島は、イギリスから10,000キロ以上も離れた南米大陸の最南端に近いところにあります。一番近いイギリス軍の基地からでも6,000キロほどの距離にあるところです。

この島はイギリス領でしたが、ここにアルゼンチン軍が上陸し、占領した。これを許さなかったのがサッチャー首相でした。英国から軍を送り、大戦争を戦った。アルゼンチンの軍艦を沈めた一方、英国の軍艦も沈められた。多くの犠牲者が出ました。それでもなお、英国は戦い続け、勝利したわけです。


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尖閣をどう守るのか


これと似たようなことが、尖閣諸島でも起こりかねない。そのとき日本はどうするのでしょう。自国だけでは決して防衛することはできないでしょう。米国に泣きつくのではないか。日米同盟の再定義のようなことが再び起こるのではないかと思います。ただ、現在のオバマ政権にその余力はないでしょう。アジアを守るという気概も感じられない。

繰り返すが、野田政権が国有化したことによって生じた問題は予想以上に大きい。日本人のあるおっちゃんが所有していた、ということで絶妙なバランスの上にあった尖閣諸島をめぐる均衡が崩れたわけです。中国はすでにこの問題で妥協することはできなくなった。巨大な相手を蹴り起こしてしまったような状態です。



西鋭夫のフーヴァーレポート

2016年6月下旬号「尖閣諸島の情勢」-4




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。