自動車社会の将来

by 西 鋭夫 September 16th, 2020

日本より大きなカリフォルニア州


アメリカ人にとっての自動車とは何か。生活必需品であり、自分の足です。しかし、その意味するところは日本との比較で、スケールが異なります。

たとえば、カリフォルニア州の面積は、日本全国の面積よりも広いわけです。東京から東北に行く、関西に行く、といった話ではありません。延々に続く広大な土地が横たわっている。

もちろんカリフォルニアにはバスもありますし、おんぼろ列車もいっぱいありますが、車がないと話にならない。アメリカで車がなくとも生活できるのは、おそらくニューヨークだけでしょう。


生活の一部としての車


日本では長いこと、車は贅沢品でした。最近では、車を自分のペットのように扱う人が大勢います。いつもピカピカで、大切にされています。

アメリカはそうじゃありません。お金持ちの車はいつもピカピカですが、それ以外の車は「生活の一部」「生活のための道具」として扱われています。間違っても、贅沢品やペットなどのように扱われてはいません。多くの車は錆だらけで、車体は凸凹。窓にもひびが入ったままの車もたくさんあります。大抵の家が2台から3台、持っています。

アメリカは16歳から運転できます。なので、高校生が大勢、乗っています。自動車に乗って学校に行くのも当たり前。車と一緒に育っているという感覚でしょう。

人生の節目で喜ばれる一番のプレゼントは新車です。例えば、高校を卒業したときに新車を贈ったら、その息子、娘は感激して涙を流すでしょう。


業界再編はあるのか


どの国で、どれだけの車が売れるかは、世界経済に大きな影響を与えます。各自動車メーカーも販路の世界的な拡大を狙っています。

フォルクスワーゲンによる不正は、自動車業界の世界地図に非常に大きな変化をもたらすでしょう。世界ナンバー1の新車販売台数を誇っていた同社は、世界をいわば牛耳っておりました。いわば大帝国だったわけです。

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その大帝国が瓦解し始めました。この機を逃すまいと、小さな開発業者も含め様々なメーカーがしのぎを削って競争する時代となるでしょう。悪い車は淘汰され、良い車だけが残る。そんな世界が目の前に広がっています。


西鋭夫のフーヴァーレポート

2015年10月上旬号「フォルクスワーゲン」− 7




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。