感動を失った日本の教育

by 西 鋭夫 April 27th, 2020

学生を馬鹿にする教授たち


今の日本の大学だと、学生が教授を評価するというのが徐々に広まってきていますけれど、アメリカでは、これは当たり前です。私が行っていた大学では 、学生による評価でトップになった先生には、学長からボーナスが与えられます。その先生は地元の新聞・テレビでも報道され、取材も受けています。


学生はお客さんです。レストランに行ってどんな食べ物が出てくるのか、演劇に行くとどんなパフォーマンスが出てくるのか、を考えることと一緒です。アメリカの学生だけでなく、教授も総長もそれを完璧に理解しています。

私がアメリカから帰ってきて、日本のある大学で学部長にこの話をしました。そうすると何と言われたか。「西君、何を言っているんだ。今の学生に、高いレベルの研究をしている偉い先生を評価できるわけがないだろう。失礼千万だ」と。「え?」と思いました。

完全に学生をばかにしています。そのときに言おうと思いましたけれど言わなかったのは、「先生、それではすし屋に行って、すしがおいしくなかったらおいしくないと言えないのですか。なぜ言えないのかといえば、それは、僕がすしを握っていないからですか」ということです。

すき焼き屋さんに行って「このすき焼きは、おいしくない」と言えば、「おまえは、すき焼きをつくったことがないのだろう」と。これに対しては「全くそのとおりです」というしかありません。18歳や20歳にもなって、クラスに出て「おもしろくなかった」ら、おもしろくないのです。だから寝るんです。出てこなくなるのです。


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なぜ学生たちは勉強しないのか


自慢話として聞かないで、一つの例として聞いてください。私の授業では、まばたきすることさえ、「お前は寝ていたのか」と言われるくらい学生は集中していました。「カタっ」と音がしたら、「お前は邪魔しているのか」と言われました。90分は一瞬で過ぎました。私は1学期の後、2学期の後、最後のクラスのとき、皆さんからスタンディング・オベーションを頂き、その中で一番きれいなお嬢さんが花束を贈呈してくれたのです。アメリカでもありますよ。

日本の学生が勉強をしないのは、教授、おまえのせいだろう。おまえがおもしろくないからだろう。そこを問題の焦点として突かないで、学生のせいにするのです。責任転嫁です。

学生に、教授を評価するだけの才能も知能もないと言っているのです。そんな無茶な。それも、何十万も何百万も出している学生・お父さん・お母さんが、です。あの西先生はおもしろくないと言ったら、こいつを首にしてやろうか、退学にしてやろうかというところです。ところが日本には退学のシステムがない。

これがよくないのです。退学は非常にいいことだと思います。出てこないのは退学。筆記試験をやらせて、書けないのは退学。レポートを出せといってコピペをするやつは退学。



西鋭夫のフーヴァーレポート

2015年8月下旬号「大学ランキング」− 5



この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。