言葉と世界観

by 岡崎匡史 April 25th, 2020

blog154.jpgFrom: 岡崎 匡史
研究室より

外国語の勉強をすると、理解しずらい事がたくさんあります。
私も中学校1年生で英語を習いましたが、英文法には悩まされました。

どうして、「名詞」に単数と複数があるのか。もちろん、日本語にも区別がありますが、細かすぎやしないか。なぜ、単数名詞と複数名詞を区別して覚えなければならないのか。

今から思い返すと悩んで当然。そもそも、日本語と英語では、言葉に対する世界観が異なっている。フランス語やドイツ語になると、もっと複雑で「男性名詞」「女性名詞」「中性名詞」まで出てくる。ロシア語となると、、、

考えただけで、外国語を勉強する気持ちが萎えてしまう。

松尾芭蕉と冠詞

日本語の言語体系にない「冠詞」や「名詞の性」を学ぶのは骨が折れます。

なぜ、面倒なのか。私たちの身近なところから考えてみましょう。

松尾芭蕉の俳句に「古池や 蛙飛び込む 水の音」という有名な句があります。

このとき、蛙は何匹、池に飛び込んだのでしょうか。そして、蛙を英語で表現するとき「a」か「the」なのか、それとも「無冠詞」なのか、「複数」のどちらにすべきなのか。大いに悩みます。

わざわざ単数と複数の区別をつけなくてはならない。私の感覚からすれば、なんて野暮なことをするのか、、、

英会話になると尚更です。判断がつかない場合、私は日常会話では「the...a...」(ジ、アー)と言って誤魔化してしまいます。

国家と言語

それはさておき、使用する言語によって「モノの見方」は変わってきます。

対象を言語化するとき、単数か複数か双数か、男性名詞か女性名詞か、生物か無生物か、格変化するのか、などを瞬時に判断している人たちが世界に居る。驚きを覚えます。このような角度から世界を認識している人々と、日本人の視点が同じであるはずがない。

もちろん、彼らにとって日常生活の一部ですから、複雑な思考は無意識の内にあります。だから、意識することすらない。しかし、無意識であるからこそ、その支配力は強いのです。

人間の思考を形作る「コトバ」には、民族性が反映される。言語を守ることは、世界観を守ることであり、民族をも守ることにつながる。だから、国家にとって「言語」は切っても切り離せない関係なのです。


ー岡崎 匡史

PS. 以下の文献を参考にしました。
・井筒俊彦『読むと書く』(慶應義塾大学出版会、2009年)
・ランガーメール編集部『aとtheの物語』(ランガーメール、2003年)
・森山茂『「ソシュール」名講義を解く!』(ブイツーソリューション、2014年)

この記事の著者

岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。

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