フーヴァー元大統領と日本

by 岡崎匡史 October 14th, 2017

blog37.jpgFrom:岡崎 匡史
研究室より

第31代米国大統領ハーバート・C・フーヴァー(Herbert C. Hoover・1874〜1964)は、「無能」というレッテルが貼られてしまっている。

世界恐慌に対して有効な経済政策を打たなかったからだ。「無能なフーヴァー、有能なルーズベルト」という歴史の改竄ともいえる評価がまかり通ってきた。しかし、近年になってようやくフーヴァー元大統領の再評価が高まっている。

フーヴァー元大統領は、日本と無関係かと思うかもしれない。しかし、フーヴァーはGHQ占領下の日本にやってきている。慈善家としての顔を持つフーヴァーは、日本でいかなる活動をしていたのか?

アメリカ食糧使節団


1946(昭和21)年5月、フーヴァー元大統領を団長とする「アメリカ食糧使節団」が来日。

フーヴァーは、トルーマン大統領の特命を受けて、飢饉緊急委員長として東南アジアを巡り日本を訪れた。フーヴァーは第一次世界大戦後によって敗れたドイツの戦後処理をした経験があり、ドイツで学校給食を開始し普及を図った人物でもある。

フーヴァー元大統領とマッカーサー元帥が日本で会談した。

マッカーサーは「いま日本で予測されている大量餓死が現実のものとなれば、占領の目的達成は不可能となるのみならず、極東および全世界において連合軍も収拾不可能な事態が生じる」「日本は、連合国軍の支配下にある巨大な強制収容所である」とフーヴァーに日本の現状を説明した。

マッカーサーは続けて、アメリカから食糧を輸入することは「日本国民を些かも優遇しようと思っていません」「占領の目的を達するに必要な量だけの食糧を要請しているだけです」とたたみかけた。

当時の統計によると、成人が生きていくためには最低限1日1,285カロリーを必要とされていた。都会の労働者は1,550カロリー摂取していたが、重労働者の体力を支えるには一日あたり最高で2,832 カロリーが必要であった。

マッカーサーの強い要望に対してフーヴァーは、「日本の秩序破壊や悪疫流行を避けるためであり、日本の食糧不足は日本の再建の障碍となる」と述べた。

フーヴァー声明

荒れ果てた日本を視察したフーヴァーは、日本への食料支援しなければならないと判断。

1946年5月6日、フーヴァーは会談後すぐに声明を発表する。

「日本は食糧を輸入すべきである。食糧が届かなければ、日本全土はドイツが設置したブーヘンヴァルト強制収容所の食糧配給量と変わらない。アメリカ国旗がこのような悲惨な状態の下ではためくとは信じがたい。キリスト教精神は言うに及ばず、アメリカ兵が敗戦国日本で社会的な不穏による危険に晒されたり、飢餓による起こる伝染病予防のためにも日本の食糧輸入は必須である。その上、食糧を輸入しなければ、日本人は国土の再建や来季の農作物を収穫する体力さえなくなってしまう。」

フーヴァーは、トルーマン政権に日本は最低でも870,000トンの食糧を輸入しなければならないと勧告した。

フーヴァー元大統領の協力により、日本国民の飢えを満たすばかりか、日本再開への希望の光が差し込んだ。


ー岡崎 匡史

PS. 以下の文献を参考しました。
・ "SCAP Officials make Detailed Reports on Food Situation for Hoover Mission," May 6 1946, The United States, President's Famine Emergency Committee Records, 1946-1947, Box 28-4, Hoover Institution Archives, Stanford University, CA, USA (hereafter cited as HI, CA)
・"Statement by Mr. Herbert Hoover Japanese Food Supply," May 6 1946, The United States, President's Famine Emergency Committee Records, 1946-1947, Box 12-8, HI, CA.
・General Headquarters Supreme Commander for the Allied Powers, Economic and Scientific Section, Price Control and Rationing Division. 1946. Food Situation during the First Year of Occupation. Tokyo: General Headquarters Supreme Commander for the Allied Powers, Economic and Scientific Section.
・西鋭夫『國破れてマッカーサー』(中央公論社、 1998年)

この記事の著者

岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。

人気の投稿記事

ミャンマーと北朝鮮

アジア最後のフロンティア 北朝鮮の今後の動向を予測する上で、東南アジアにあるミャンマーは一つのポイントです。ミャンマーはアジア最…

by 西 鋭夫 November 8th, 2021

中朝関係の本当の姿

水面下でのつながり 中国が北朝鮮の核実験に対して、断固反対すると声明を出しました。しかし、中国の習近平政権と、北朝鮮の金正恩政権…

ミサイル / 中国 / 北朝鮮 / 核実験 / 米国

by 西 鋭夫 November 1st, 2021

岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。