なぜ予測は外れるのか?

by 岡崎匡史 June 3rd, 2017

blog15.jpgFrom: 岡崎 匡史
研究室より


あなたは、未来を予測したいですか?

なぜ、あなたは未来を知りたいのでしょうか?

そう、「不安」だからです。

未来を知ることができれば、備えができます。「安心」をもたらしてくれます。

だから、あなたはニュースや著名人の意見を聞いて情報収集します。でも、情報を集めれば、集めるほど不安は募るばかり。

頼りにしていた有名な経済学者でも予測を外します。そして、経済学者は「理論上では景気はよくなるはず」と捨て台詞を吐く。


専門家の罠


どうして、専門家ほど間違えるのだろうか?

それは、理論(データ)や成功体験に依存してしまうからです。

問題が起こると、過去のデータに照らし合わせてみる。いままで積み重ねてきた理論もある。データに基づくとこのパターンに違いない
問題ないはずだ、と考えてしまう。

ここに(自称)専門家の罠があります。ちょっと専門分野をかじったことがある人が失敗しがちです。そう、私のことです。

西先生は、2016年3月の段階でトランプが大統領選挙で優勢と分析。トランプを応援する論陣を張り続けました。フーヴァーレポートを購読している方なら知っていることです。

西先生にインタビューをしている私は、ヒヤヒヤものです。なぜなら、「トランプは負ける」と確信していたからです。


なぜ、トランプが勝てないか?


授業で習う法則(データ)があるからです。

アメリカ政治を少し勉強したことのある人なら常識です。


過激な主張や政党に属さない候補者。民主党・共和党以外の「第三政党」の候補者。このタイプの政治家は、大統領選挙では勝てない。


しかも、トランプは政治家経験ゼロ。

トランプのような候補者は、重要な政治・社会問題を取り上げて大衆の注目を集めることはできます。「国民の政治不満のはけ口」の役割を果たします。熱狂的なファンもつきます。

しかし、選挙は別物。過激であればあるほど、その政策は大勢の人から支持されません。選挙で勝つには、多くの人に好まれる政策を主張するのが王道です。多くの人の共感を集めて、たくさんの票をかきあつめる。

トランプは真逆の行動をしているように見えました。一部の保守層の心を掴んだとしても、それ以外の票を集めることはできない。これじゃ、選挙には勝てないよ。

だから、トランプ人気は一時的なものである。いずれ、トランプは失速する。私だけでなく、多くの識者が同じことを考えていたはずです。

「理論上、トランプは負けるはず」

しかし、選挙結果は常識を打ち破るものでした。

理論より、現実は常に正しい。

人生経験も豊かで、勉強をしている人ほど、過去のデータにとらわれてしまいます。そして、迫ってくる現実を直視することなく、パターン化してしまいます。これは、私にとっての自戒です。

あなたも、業界の常識に惑わされていませんか?


ー岡崎 匡史

PS. 以下の文献を参考にしました。
阿部竹松『アメリカの政治制度』(勁草書房、1993年)
ロナルド・A・モース『アメリカ政治の基礎知識』(麗澤大学出版会、1999年)

この記事の著者

岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。

人気の投稿記事

ミャンマーと北朝鮮

アジア最後のフロンティア 北朝鮮の今後の動向を予測する上で、東南アジアにあるミャンマーは一つのポイントです。ミャンマーはアジア最…

by 西 鋭夫 November 8th, 2021

中朝関係の本当の姿

水面下でのつながり 中国が北朝鮮の核実験に対して、断固反対すると声明を出しました。しかし、中国の習近平政権と、北朝鮮の金正恩政権…

ミサイル / 中国 / 北朝鮮 / 核実験 / 米国

by 西 鋭夫 November 1st, 2021

岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。