アメリカ兵の犯罪

by 西 鋭夫 May 5th, 2015

アメリカ兵傍若無人


日本が自国の将来に疑いを持ち、アメリカに「隠された意図」があるのではないかとビクビクしていたからと言って、日本だけを責めることはできない。

アメリカ占領軍の兵士たちの目に余る行動は、日本人の疑いをさらに深めた。

GHQの教育担当官ハワード・ベル博士は、1947年9月、北海道に調査旅行に行き、驚くべき報告書を書いた。


「スウィング将軍指揮下の第187空挺歩兵連隊の存在は、札幌市民を恐怖のどん底に陥れている。連隊の若い兵士は、抵抗しない日本人を軍事訓練の練習相手にしている」

「最も多い犯罪は破壊と暴行である。兵士たちは血を求めて外出する。彼らは日本人を殴打し、ナイフで刺し、さもなければ袋叩きにする。〝腕試し、やってみるか〟と挑発したり、勝手な理由か、あるいは全く理由もなく、暴行するのだ。」

「兵士たちは店に入り、好きなものを取り、ガラスの1、2枚も代金代わりに割っていく。婦女子は暗くなってからは滅多に通りにでない。その結果、皮肉なことに、我々が〝命令し、教育する〟ことになっている住民は、これらのギャングたちからアメリカ人およびアメリカ式生活様式の教訓を学びとっている。ここの 兵士たちは明らかに、民主主義や立派な行為というものを全く理解していないし、しようともしない」

当局に犯罪届を出す日本人は殆どいない」「米兵が関係した犯罪は、5分の1も警察に通報されていない」

米兵の犯罪


1947年9月1日から16日までの間、「16件の犯罪が報告されたが、容疑者の兵士が逮捕されたのはただ1件、郊外でスピードを出して日本の婦人を死亡させた事件だけだった。他の事件はすべて〝MP(Military Police、アメリカ軍憲兵)に通報〟で終わっていた」。

ベル自身、札幌で、アメリカ軍のジープによる事故を目撃した。ジープがとても混雑した市場通りを突っ走ろうとして、日本人の男1人を跳ね飛ばした。ジープはそのまま行こうとしたが、ベルが強く抗議し、そのはねられた男を病院へ連れていけと説得し、やっとこの男は病院へ運ばれた。

「ジープの運転手と乗客はMPであった」とベルは嘆いた。

「朝日新聞」の自主規制


婦女暴行も日常の茶飯事であり、新聞の記事にもならなかった。当時、検閲されている新聞には、日本婦女が暴行された記事なぞ、載せることはできなかった。

アメリカ兵のジープに轢(ひ)き殺された最も有名な人物は、「爆笑王」といわれ、絶大な人気を1身に集めていた落語家の第2代目三遊亭歌笑(さんゆうていかしょう)であろう。

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1950(昭和25)年5月30日、午後7時半すぎ、彼は、評論家大宅壮一との対談後、銀座通りを横切ろうとした時、アメリカ兵のジープにはねられ、即死した。

犯人は轢き逃げし、事件はそのまま迷宮入り。『朝日新聞』は「小型自動車にはねられ即死した」と報道し、アメリカ兵の「ア」の字もなく、「ジープ」もない。『朝日』は「事後検閲」もなくなっていた当時、自主検閲をしていたのであろう。

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。