眼を覆うばかりの横暴
もう1例を挙げてみよう。
海軍将校として東京へ来て、東京で退官し、弁護士として東京に住み着いたアレックス・ペンドルトンは、チャールズ・S・マーフィー(トルーマンの行政補佐官)に「容認できないGHQの横暴」について手紙を書いた。
マーフィーはトルーマン大統領に、「ペンドルトンは大変なインテリです。極めて大袈裟に言う傾向がありますが、彼の批判には、さらに調査を必要とすべき確かな背景があるように思えます」と進言している。
ペンドルトンは訴える。
⑴「マッカーサー司令部の日本人に対する態度は、初めからとても厳しく、日本人は、その性格、教育、社会における地位に関わりなく、犬のように扱われている。GHQ職員の地位がいかに低く、あるいはその行動がいかに不公正であっても、どうすることもできない」
⑵「日本人にとって報道・言論の自由は存在しない」
⑶「賄賂が必要なことは常識になっており、当然のことと考えられている」
⑷「既に金銭的に欠乏した人々から不必要に財産を没収することが横行している」
⑸「我々が早く新たな行動をとらなければ、日本国民は、共産主義者からくるどんな誘いをも歓迎する」
⑹「今、日本に共産軍が侵攻してくれば、アメリカに怯えている多くの人たちの温かい歓迎を受けるだろう。アメリカ本土のマスコミが伝える以上に、我々が日本人を共産主義に駆り立てている」と警告した。
マッカーサーの耳には届かず
「非アメリカ的」振る舞いに及んでいるアメリカ兵たちのことを、雲の上にいたマッカーサーは恐らく知らされてはいなかったのだろう。
1951年5月5日、アメリカ上院の外交・軍事両合同委員会の公聴会で、「日本人はアメリカの生活様式だけでなく、アメリカ人の人格をも賞賛し、敬服している。特に、アメリカの家庭内における信仰の深さには強い感銘を受けている」と断言した。
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。