コロナ下の教育
コロナによって、世界中の教育は大きな打撃を受けました。このツケは誰が払うのか。オンラインでの授業が続きましたが、ようやく本来の対面授業に戻りつつある。
コロナ世代である学生へのしわ寄せは、長期的にみて日本に大きなダメージをもたらすのか。皆さん、これは大打撃です。私は時々タクシーに乗って、運転手さんと「コロナで俺の好きな焼き鳥屋が潰れたんだ」というような話をしています。
皆さん、幼稚園から小・中・高、大学もそうですが、この三年間、多くの子どもや学生がマスク姿で過ごしました。そしてこの間の卒業式では、中・高で「マスクを取ってもよろしい」と言われて取って、そこで初めて友達の顔をしっかり見た、という話まであります。このダメージは長く残ると思いますよ。若い時に人の顔の表情を読む。その大切な機会が大きく失われた。
画面の向こう側
大学もこの三年間、高い授業料を取りながら、講義を遠隔でやった。皆さん、遠隔でやって誰が見て、聞いているのですか。学生はおそらく、出席をチェックされたら困るので遠隔画面には入っている。しかし、学生が画像を出さない限り、学生が何をしているのかわからない。
先生がジョークを言っても、みんなが笑っているのか、笑っていないのか。それすらわからない。そうです。俺たちは人間ですから、そうした接点がどれだけ必要か。目で見るコミュニケーションです。つまり、顔の表情を読む、雰囲気を読む。そしてジョークで笑う。こういうことがどれだけ必要か、お分かりでしょう。
遠隔では、それがなかなか出来ません。様々な遠隔ツールがありますから、それらを開発した会社は大金持ちになったのでしょうけれどね。

オンライン教育の根本問題
ちなみにアメリカでも、オンライン授業への移行をめぐって、大学の授業料に対する不満が出ました。スタンフォードでも同じような議論がありました。
学生は遠隔での授業を聞きながら、スマホをいじっている。オンラインの授業を、学生が真面目に聴いているという前提に立って議論を進めると、大きな間違いを犯す。「馬を水辺まで連れて行くことは出来るが、水を飲ませることは出来ない」という表現があります。教育環境を整えたり、教師が導いたりしても、最後は本人の意思次第なのです。
では、オンライン教育の根本的な問題はどこにあるのか。一番大きい問題は、やはり人間の接点ですよ。教授や先生と学生さん、生徒さんの接点。顔が読める、息遣いが聞こえる。そういう接点が大事なのです。
私は大阪の男子校に行きましたが、歴史が好きになったのは、その時の歴史の先生のおかげですよ。おそらく六〇歳を過ぎておられたと思います。ガキどもばかりでしたが、この先生のお話を聞く時は、みんなシンとしていたのです。すなわち、血が通い、切られた時には血が出るような、生きた歴史の話を教えてもらった。
そういう体験をしていると、学問に対して感動を覚えるのですよ。勉強で一番大切なのは、新しい知識が入ってきて、今まで持っていたものをガラッと新しくしてくれた時の、あの感動です。知識、学問、教育は感動の世界です。
それがないとしたら、何という無駄な時間を過ごしているのかと思います。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2023年9月下旬号 大学崩壊-6
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

