清華大学
中国のある有名な大学の話です。清華大学というところがありますが、そこの世界ランキングは二六位です。清華大学の設立は、一九〇〇年の義和団事件にまで遡ります。日本も欧米列強と一緒になってウワーッと軍隊を送り、清国を徹底的に叩いた。その後、清国は莫大な賠償金を払うことになります。
ここでアメリカのソフト・パワーの賢いところが出てくる。アメリカは清国から受け取る賠償金の一部を返還し、そのお金が教育に使われました。そうして一九一一年に出来たのが清華学堂、後の清華大学です。
もともとは、アメリカへ留学する学生を育てるための学校でした。ここで徹底的に教育して、出来のいいやつはアメリカの一流大学へ送る。つまりは、ハーヴァード、スタンフォード、プリンストン、イェール、コロンビアなどです。そういう大学へ優秀な学生を送り出していったのです。

つまり、出来た当初から世界を見ていた。日本は今、そこまで大胆なことをしているのですか。日本の大学は、なぜ世界ランキングの、せめてトップ一〇に入らないのですか。
ここをしっかり考えなければいけません。俺たちはこんな小さな池の中で、何を競争しているのですか。競争する相手を間違っているでしょう。日本には大谷翔平君みたいな、世界に通じる男がいる訳ですよ。
頭脳流出
中国と日本の学術格差はすでに広がっている。優秀な日本の研究者が出てきても、中国をはじめ海外からヘッドハンティングされる時代です。
皆さん、世界中が日本の出来るやつを狙っている。日本の大学教授の給与は、一〇〇〇万円前後という世界です。もちろん大学や分野によって違いますし、それより高い人もいます。しかし世界に目を向ければ、優秀な研究者に対して、日本では考えられないような研究費や給与、さまざまな待遇を用意する大学がある。「先生、これだけ研究費を出します。研究室も用意します。ぜひ、いらっしゃい」。そういう世界です。
アメリカだったらどうするでしょうか。優秀な研究者であれば、国籍に関係なく引っ張ってくる。お金も出す。研究環境も整える。世界中から頭脳を集め、自分の国の学問を豊かにしていくのです。
もちろん、日本人のノーベル賞受賞者の中には、アメリカで研究経験を積んだ人もおります。しかし、湯川秀樹先生をはじめ、受賞につながる研究そのものを日本で行った人も大勢いる。問題は、その天才たちが、日本で研究を続けられる環境を作れているのか、ということです。
よその国は、日本で生まれ育った優秀な人材を自分たちの所へ連れていって、学問の世界で自分の国を豊かにしていく。そうすると、そこに通う学生たちも天才に指導してもらうので潤う訳ですよ。日本はなぜしないのか。
日本の天才的な頭脳が海外へ流出すれば、日本の大学の競争力はますます低下していくことになります。文科省はこの現実を見ているのか。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2023年9月下旬号 大学崩壊-5
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

