米露ミサイル共同防衛

by 西 鋭夫 July 6th, 2026

関係改善策

ロシアのNATO加盟が実現しないのであれば、次はどうするか。プーチンさんは長い間、ロシアが歓迎されていないことを肌で感じておりますが、それでも欧米諸国との関係改善を図ろうと様々な提案を行なっております。その代表例の一つは、ロシアとアメリカが共同してミサイル防衛を行うという構想です。2000年代に2度ほど、この機会があったように思います。

皆さん、NATOはロシアを仮想敵国にしてどんどんと最新鋭のミサイルを開発しておりますが、ロシアも負けてはおりません。プーチンさんが言うには「NATOもアメリカもミサイルを持って我らを脅すので、我々はあなたたちが持っているミサイルよりも速いミサイルを造りました」とのこと。俗にいう超音速ミサイルです。迎撃しようにも、速すぎて追いつけない速さのミサイルです。

それだけの技術力がある。しかしそんなことにお金を注ぎ込むより、欧米諸国とビジネスをしてどんどんと国を豊かにしたい。この構想が議論された2000年代には、もちろん超音速ミサイルなどは開発されておりませんが、構想の背景にあるのはそうした考え方だと思います。

 

軍事産業

いろいろと憶測はあるのですが、この構想も実現することはありませんでした。大きな理由の一つ、それは仮想敵国がなくなること。そしてロシアのような悪者がどこかで戦争をする可能性を潰したくないからです。平和なロシアが生まれて一番困るのは、ヨーロッパ主要各国やアメリカの軍事産業です。すなわち、戦闘機や兵器を製造する産業です。

軍事産業というのは恐ろしく強いロビー活動をやっています。戦争があるたびにたくさんの兵器が必要になりますから、軍事産業は儲かってしょうがない。巨大な産業、巨大な経済システムを作っております。ゆえに戦争がないと困るわけです。ですから、戦争がなく、予算が減らされそうになると、大反発します。本当に大丈夫なのですか。どこどこで戦争が起きたらどうするのですか。といった具合です。

そしてもう一つ重要な要因は、今のロシアは、国名は違っても、昔のソ連邦であるわけです。50年近く敵対していた相手です。ソ連邦が何をしてきたのか、様々な情報が蓄積されております。膨大なデータと経験から、国が変わっても、その本質は変わらないのではないか、という不信の感情は完全には拭えないのです。ゆえに、アメリカも、ヨーロッパもこの共同提案には賛成できないのです。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
プーチン・カールソン対談(2024年3月上旬号)-5

 

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

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1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。