信教の自由

あまり表立った報道はなされていないようですが、アメリカの対北朝鮮政策の中には宗教に関わるものもあります。すなわち、北朝鮮が国内にいるキリスト教徒を迫害しているのではないか、人々の「信教の自由」を侵害しているのではないか、という非難です。

北朝鮮内では、宗教活動、特にキリスト教の活動は厳しく禁止されております。その背景には、宗教を危険視する発想があります。中国共産党も建国当時から宗教をいわばアヘンと捉え、特に西洋由来の宗教を禁止しました。これと同じように、金さんも宗教を厳しく取り締まっております。

しかし、悲劇的なことに、朝鮮半島に住む人々とキリスト教は親和性が高いのです。東アジアにおいては人口比でもっともキリスト教が多いのが朝鮮半島なのです。今でも私の知っている在日の人はキリスト教徒が圧倒的に多い状況です。韓国にももちろんキリスト教徒は大勢いらっしゃいます。

政治と宗教

ソ連でもかつて７０年間、宗教が禁止されておりました。それはロシア正教でしたが、ソ連が崩壊してロシアになった途端、宗教が社会の場へウワーッと出てきました。あちこちにあった教会には人がワッと集まりました。

日本でもキリスト教を禁止していましたね。それで隠れキリシタンと呼ばれる人々が出てきました。残酷な拷問に耐えながらも、100年、200年と生き残っていくわけです。

それと同じようなことが今、北朝鮮でも起きているのではないかと思うのです。「宗教は国民のアヘンだ！」などと言われながらも、延々と隠れキリシタンのように生き残っていると思います。宗教の弾圧に成功した国や文化はございません。政治と宗教は常に緊張関係にあったのです。

政治犯

北朝鮮では政治犯の収容所に8万人とも12万人とも言われる人たちが収容されていますが、その中にもキリスト教徒が大勢いらっしゃると思います。信仰がバレたら、「はい、収監所に行きましょう」となります。そこでおとなしくしていれば良いのですが、少し反対すると殺されます。

繰り返しになりますが、朝鮮半島というあの決して広くない範囲の中で、何百万、何千万という人がキリスト教徒です。分かっているだけでそれぐらいいるのです。そうすると分かっていないキリスト教徒はその倍ぐらいおられますから、どれだけ朝鮮半島にキリスト教が広まっているのか、想像がつくと思います。

キリスト教が根付く土壌があるとすれば、それは日本のように八百万の神様がいらっしゃらないからかもしれません。日本にはたくさんの宣教師が来られましたし、GHQは日本をキリスト教国化しようと頑張りましたが、失敗に終わっております。

西鋭夫のフーヴァーレポート
朝鮮半島統一の幻想（2020年4月上旬号）- 7