From:岡崎 匡史
研究室より
あなたは、「お雇い外国人」と聞いて、誰を思い浮かべるでしょうか?
オランダ出身のフルベッキ(1830〜1898年)を挙げる人もいることでしょう。
フルベッキ以外で、有名なオランダ人のお雇い外国人はいたのでしょうか?
土木技師
実は、フルベッキと同じ月給600円の高給をもらっていたオランダ人がいました。それが、土木技師のファン・ドールン(1837~1906年・勲四等旭日小綬章)。
ドールンは、水源から水を引くための水路工事を実施。日本における近代土木の礎を築いた人物である。
明治の三代築港(野蒜港、三国港、三角西港)は、オランダ人技師の指導のもとに構築された。

お雇い外国人の大多数はイギリス、フランス、アメリカ、ドイツの出身者であったが、海や河川など水辺のインフラ設備に関してはオランダ人が重用された。
国土に海抜0メートル以下の低湿地が多いオランダは、干拓、水路の整備、灌漑に関してヨーロッパでも最高水準の技術を有していた。
河川を活用した水上輸送は、日本の殖産興業の土台となるものであり、明治政府はその工事をオランダ人に託した。
ドールンの銅像
ドールンは、安積疏水(あさかそすい・福島県郡山市)工事を実施。日本初の科学的な水位観測を行う。彼の功績を祈念してドールンの銅像が立っている。
しかし、悲劇が襲った。第二次世界大戦中、ドールンの銅像は日本政府の命令で金属供出されることになった。ところが、地元の農民たちが銅像を足下から切り離し、隠してしまう。密かに隠されていたドールンの銅像は、戦後になって再び台座に納められることになった。
第二次世界大戦中、オランダは敵国であったが、地元民のドールンに対する敬愛の念があったからこその逸話である。
ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・梅溪昇『お雇い外国人の研究』(青史出版、2010年)
・水島治郎『一冊でわかるオランダ史』(河出書房新書、2023年)
この記事の著者
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。
岡崎匡史
日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。