カトリックと大統領

by prideandhistory_admin October 1st, 2022

From: 岡崎 匡史
研究室より

2022年11月、アメリカは中間選挙を控えている。
はたして、選挙の行方はどうなるのか。

黒人のオバマ大統領が誕生したのは2009年。ヒラリーが大統領選挙に立候補し、女性大統領が現実味を増したのが2016年。しかし、共和党のトランプが勝利し、2020年は民主党のバイデンが政権を奪え返す。

はたして、2024年には、どのような番狂わせが起きるのか。

不文律


アメリカ大統領選挙の歴史を振り返ると、様々な「不文律」が存在した。不文律なので、法律で明記されたルールではない。しかし、暗黙のうちに守られてきた約束事のようなもの。

それが、「人種」「性別」「宗教」です。

1960年代のアメリカでは、キリスト教のカトリックを信仰している者は「大統領になれない」という不文律が厳然としたった。

男性の白人でプロテスタントを信仰している者が、歴代の大統領を務めてきた。しかし、この不文律を打ち破ったのがジョン・F・ケネディ(John F. Kennedy・1917〜1963年)。ケネディ家のルーツは、アイルランドでカトリックを信仰している。カトリックは、アメリカでは少数派。

ケネディは、不文律をどのように打ち破ったのか。


ケネディ演説

そもそも当時のアメリカで、なぜカットリックは大統領になれないという暗黙のルールが存在していたのか。

それは、カトリックはヴァチカンのローマ教皇を敬うからである。カトリックが大統領になったら、アメリカはローマ教皇の支配下に置かれるという精神的な恐怖心が根底にあった。

アメリカは、ピューリタン(プロテスタント)がイギリスから逃れて建国した国である。カトリックが大統領になることは、アメリカ建国の精神と反するとされた。

しかし、ケネディは不利な状況を乗り越えるべく「私はカトリック信者」であると発言し、聴衆の心を捉える演説を行う。


「私はカトリック信者です。しかし、私がカトリックとして生まれたときに、すでにアメリカ合衆国の大統領になる資格がないということになるのでしょうか。連邦議会の議員にはなれたのです。私の兄は、この国のために命を捧げました。それでも、私は大統領になれないのでしょうか。海軍に入隊するとき、誰も私がカトリックかどうか聞きませんでした。私の兄が最後の任務で爆撃機に乗り込むとき、誰も彼がカトリックかプロテスタントかなど聞きませんでした。それなのに、なぜ今頃、私のアメリカへの忠誠心が問題になるのでしょうか」

スピーチライターが背後にいるものの、ケネディ演説は有権者を魅了し、若き大統領誕生を後押しする。



ー岡崎 匡史

PS. 以下の文献を参考にしました。
・仲晃『ケネディはなぜ暗殺されたか』(日本放送出版協会 、1995年)

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