日本の急所

by 西 鋭夫 August 8th, 2022

防衛能力

サイバー攻撃に対して、日本の備えは万全なのでしょうか。

アメリカでさえサイバー攻撃を何度も受けております。それを考えると、日本の場合はすでに何百回、何千回攻撃を受けているかわからないレベルです。政府もそうでしょうが、日本の民間会社も大打撃を受けております。

備えは万全ではありません。日本政府は今、自衛隊の中に「サイバー部隊」を作ることを計画しております。もう実際に動いているのでしょう。しかしそれでもまだまだ出遅れております。

 

教育機関の設立

サイバー大戦に備えるためには、サイバー技術やIT技術に特化した高度で専門性のある学校の設立が必要です。入学者も学年の枠に縛られていてはダメです。

音楽家や芸術家と同じように、その分野に特別な才能を持って生まれてくる子どもたちがおります。そんな子どもたちに奨学金をつけ、ITについて徹底的に学んでもらうのはどうでしょう。そうでもしないと世界水準に追いつけない。今の教育システムは、年齢とともに進級していく形ですが、ITが大好きな子どもたちは、自分たちでハッキングして遊んでいるかもしれません。それが見つかったら親が怒られたり、少年院に入れられたりしますが、「サイバー大戦への備え」という観点からはこの方策は賢明なものではありません。

アメリカでは逆です。サイバー攻撃をやって捕まった子どもたちは雇われて、訓練を受けております。悪い発想を叩き直しながら、技術と能力をしっかりと教え込んでいくわけです。

 

標的

サイバー大戦にて、最初に狙われる日本の急所はすでに世界各国に知られております。一つ目は海底ケーブル、二つには自衛隊や米軍関係の通信所など。そして最後に、原発や水道施設といった生活インフラに関わるところです。

日本の原発は311の悲劇が起きてもなお、安全基準では世界最高水準だと勘違いしておりますが、原子炉を建てる際にはサイバー攻撃など想定しておりませんし、その発想自体もありませんでした。



福島第一原発の失敗は全て「電源喪失」にあるかのような物言いですが、そもそも冷却システムに関する部局がサイバー攻撃を受けたら、燃料を冷やす術を失います。そうなると、原発立地自治体は被曝し、広範にわたって居住スペースを失います。非常に恐ろしい世界です。「米軍や自衛隊がいるだろう」、「国がなんとかしてくれるだろう」などと考えたい気持ちも分かりますが、汚染された中での活動は制限されますし、米軍にも自衛隊にも、国にも何もできないでしょう。そもそも、攻撃する側のサイバー技術が巧妙であれば巧妙であるほど、原因を突き止めることが難しいので、その状況を打破したり、解決したりすることは極めて難しい。

そんな時が来たら、日本は一体どうなってしまうのか。非常に恐ろしい世界が待っていると言わざるを得ないでしょう。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
サイバー戦争(2018年3月下旬号)-7

 

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。