核廃絶外交の裏側

by 西 鋭夫 August 4th, 2021

核開発競争


2016年1月6日、北朝鮮は地下核実験を実施しました。北朝鮮の最高指導者である金正恩は水爆実験に成功したと発表しました。そんな中、世界の警察官とまで言われたアメリカの大統領が「核兵器のない世界」を目指す。理想は素晴らしいが、現実に対処できるのか。

米国科学者連盟の統計によると2016年現在、一番多く核を保有している国はロシアで7,300発、2位はアメリカで6,970発、その次がフランスで300発です。ソ連とアメリカが争っていた冷戦時代、アメリカは3万発以上を保有しておりました。

もちろん核兵器の数は年々減少しておりますが、公表されている数字を信じる方が馬鹿らしい。隠された数は想像以上でしょう。
この他にも、北朝鮮、中国、さらにはインドやパキスタンも保有している状況です。パキスタンの原爆は、北朝鮮に売られていることも明らかになっています。北朝鮮はそれを改良して、より強力なものを作っている。


核武装論


北朝鮮はなぜ攻撃されないのか。脅されてもびくともしないのか。答えは簡単です。それは北朝鮮がミサイルと核を持っているからです。今年最初の実験で、水爆の実験にも成功したと言っています。下手に手を出すと日本が一発でやられる。アラスカまでやられる可能性もある。

このような中で、今年の5月にオバマ大統領が広島を訪問される。これはオバマ政権にとっては最後のチャンスでしょうが、北東アジアの国際政治環境から見れば、何の意味もない。北朝鮮はこれをせせら笑って見るでしょう。

オバマさんが広島で核廃絶のことを訴えれば、日本ではますます核武装論がタブー視されますから、日本におけるまともな防衛論壇も消えて無くなってしまうでしょう。弱肉強食の国際政治の舞台に取り残されてしまう。次期候補のトランプ氏が大統領になったら、日本の核武装論について本気で言い出しかねません。その時、日本はどうするのか。


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マッカーサーの判断


オバマさんの状況は、いわば70年前のマッカーサー元帥が「武力のない日本」を夢見たのと同じ状況だと言えるかもしれません。しかし、マッカーサーは頭がずば抜けて良かった。勝利にしばらく酔っておられましたけど、朝鮮戦争が起こったときに正気に戻った。

マッカーサーは北朝鮮と中国の国境に原爆を20発から25発落とすと、戦争は終わりますし、安定します、とトルーマン大統領に進言した。しかしトルーマンはそんなことをやったら「核戦争になる」と言い、マッカーサーを首にしました。マッカーサー解任後の戦況は、中国の人海戦術によって悪化していきます。休戦協定までの間に、多くの米兵が命を落としました。

オバマ政権が中東から兵を引き始めようとしたとき、そこにはすでに現地勢力による抵抗と反乱が生まれていました。しかし彼は正気に戻らなかった。撤退後に、イラクは荒れ、過激なテロ集団が生まれる素地ができていったわけです。兵を引き上げたら平和になるという発想は幼稚です。




西鋭夫のフーヴァーレポート

2016年5月下旬号「オバマ大統領による広島訪問」-4




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。