フランスの憂鬱

by 西 鋭夫 October 20th, 2017

傀儡


ベトナム人を過小評価していたフランスは負け続け、支配しえたインドシナ地域は次第に縮小してゆき、サイゴンを中心とした南ベトナムだけになる。

ベトナム人の心が離れてゆく現状に焦ったフランスは、1949年7月1日、ベトナム人・バオダイ(36歳)を担ぎ出し、彼を統治の「顔」として前面に押し出し、ベトナム国民の支持をとりこもうとした。


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バオダイ


皇帝バオダイ


このバオダイが曲者である。

フランス統治下ベトナムの「皇帝」であったバオダイは、日本軍がフランスをインドシナから追い出すと、日本占領軍と手を組んで権力の座に居直り、盛者の宴に酔っていた。

それも束の間、日本の敗戦(1945年8月)と同時に、バオダイはホー・チミンに皇帝の座から追放された。殺されなかったのが不思議だ。


焦るフランス


インドシナに戻ってきたフランスがそのバオダイを担ぎ出したことは、フランスの危機に対する認識不足を明確にした。

「帝国主義による植民地時代」の終焉という時の流れに逆行せんとしたフランスは、流血の年月を堪え忍ばねばならなくなった。



西鋭夫著『日米魂力戦』

第2章「アメリカの怨霊・ベトナム」−8




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。