会談の行方

by 西 鋭夫 July 22nd, 2015

昭和天皇とマッカーサー


翌日、9月28日、『朝日』『毎日』『讀賣報知』の3大紙はこの会談を報道し、29日には、2人が並んで立っている写真を掲載した。

占領開始直後、国務省から派遣された日本通のエマーソンが、「モーニング服を着た哀れな小男のそばにそそり立つ、開襟(かいきん)の軍服姿のマッカーサー元帥」と描写した有名な写真だ。

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日本政府 vs マッカーサー


日本政府(山崎巌内務大臣)は、3紙が天皇の神聖を汚したとして、発行停止処分にしようとした。

マッカーサーは、9月27日(天皇との面会日)付で、「新聞および言論の自由の促進」という新たな指令を出し、自分と天皇の写真を掲載させた。

追い打ちをかけるかのように、マッカーサーは、「最高司令官からの命令がない限り日本政府はいかなる新聞記事に対しても罰則を加えてはならない」と命令し、同時に、日本政府が報道を取り締まるために作った戦前の法規12条を廃棄した。

まだ気が納まらないマッカーサーは、日本政府に「毎月1日と16日に、今回の指令および9月10日、同24日の各指令に基づいてとった政府の措置のくわしい報告書」をGHQに提出するよう命じた。

マッカーサーは、日本政府を全く信用していない。


東久邇首相 vs マッカーサー


一方、東久邇首相は9月29日、各官庁の新入省者65人に、「まず、第1に官吏は天皇陛下の官吏であるという自覚を持っていただきたい」「国体観念を持つことが最も大切である」「天皇陛下に奉公するのが官吏たるの本分である」と訓令した。

マッカーサーは、敗戦国の首相がこのような台詞を公の場で吐くのを嫌悪していた。

10月4日、米軍機関紙『スターズ・アンド・ストライプス』は、山崎巌(いわお)内務大臣とのインタビューを掲載した。


「思想取締の秘密警察は現在なお活動を続けており、反皇室的宣伝を行なう共産主義者は容赦なく逮捕する。また政府転覆を企む者の逮捕も続ける......政治形態の変革、とくに、皇室廃止を主張するものはすべて共産主義と考えて、治安維持法によって逮捕される」と山崎は断言した。


「政府転覆を企んでいた」マッカーサーは、直ちに山崎を馘(くび)にした。

公職追放である。

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。