独裁権力

by 西 鋭夫 April 7th, 2015

日の丸禁止


トルーマン大統領がマッカーサーに「もし各国間に意見の相違が生じた時は、アメリカの政策が事を決定する」と伝えたように、日本占領は連合国共同の仕事だという見せかけは最初からぐらついていた。

マッカーサーにとって幸いなことに、アメリカとソ連の間には意見の相違が絶えなかった。

アメリカだけが日本を支配するのだというマッカーサーの確信は、1945年9月8日付(厚木上陸の9日後)の彼の命令に判然(はっきり)と出ている。

「我が国(アメリカ)の国旗を掲げよ。東京の太陽の下で、栄光溢れる我が旗を靡(なび)かせよ。抑圧された人々の希望の象徴であり、正義の勝利の印となるように」

日本国民よ、アメリカの星条旗を見て、新たな希望に燃え、アメリカが正義の国であると思い知れ、と言っている。

日の丸は「悪」の象徴であるから、掲揚禁止となった。

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マッカーサー vs. 他の連合軍


自分の独裁が他の連合国に邪魔されないように、マッカーサーは外国の代表と日本政府が結ぶ全ての契約は必ずGHQを通じて行なうよう命令した。

他の連合国は、アメリカの独裁を妬(ねた)んだ。

特にソ連とイギリスは、日本占領で同等の役割を強く要請し、ソ連はマッカーサーから独立した軍隊によって北海道を占領することを要求した。マッカーサーは、これを一蹴(いっしゅう)した。

1945年10月中旬、トルーマンの使者エドウィン・A・ロック(元戦時生産局副長)が、中国(蒋介石)の経済復興の使命を受け中国へ行く途中、東京に立ち寄った。

マッカーサーはロックに、「ロシア人が最高司令部(自分)の権力を弱くしたいと企んでいるが、これは日本で共産革命を成功させるため、まず日本を崩壊させようとしているからだ」「極東は今やアメリカにとって最も重要な地域であり、自分は朝鮮半島の38度線に重大な関心を寄せている」「38度線でロシア人は、大量の兵器を集結させており、私(マッカーサー)がこれまで見たなかで最大の戦車も含まれている」と伝えた。

「マッカーサーはアメリカとソ連が極東で衝突した場合、中国北部が極めて重要になるから、ロシア人が満洲で何をしているかを知りたがっている」とロックはトルーマン大統領に報告した。

だが、トルーマン大統領とバーンズ国務長官は、「日本占領に参加させよ」というソ連、イギリスの要求に応える準備を始めていた。

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。