覇権主義の裏側
アメリカ帝国の衰退を見越して、中国はアジアにおける覇権を手に入れようとしている。しかし、中国はそもそもなぜアジアにおける覇権を手に入れる必要があるのだろうか。
その最大の理由の一つは、膨大な人口を支えるエネルギー源です。豊富な資源が欲しい。特に尖閣諸島沖には、1,000億バレル以上の石油埋蔵量があります。この量はイラクやクウェートの石油埋蔵量に匹敵するほどの量です。
中国が欲しいものはそれだけではありません。新鮮な水と豊富な食べ物です。東南アジア諸国でお米や大豆をジャンジャン作り、家畜業もドンドンと始めたい。綺麗な水も欲しい。中国はしまいにはアジアで物足りなく、アフリカや南米にまで手を伸ばしています。最近ではブラジルにて広大な土地を買いました。中国向け輸出用の食物を作るようです。
国内からの不満
現在の中国が今もっとも恐れていることは、豊かになった国民が怒り狂うことです。中国はこの十数年で見事な経済成長を遂げました。中産階級の数がどっと増えた。何千万人レベルの話ではありません。億人レベルで増えた。
彼らは自分たちの豊かさを守るために、さらなる経済成長を求めます。この期待に中国共産党が応えられなくなったとき、国内では非常に大きな反乱が起きるでしょう。このスケールは想像を絶するものです。政府に反旗を翻した群衆を、軍隊を動かして鎮圧する政府もすごいが、天安門事件のようなことは今の中国には出来ない。国際的な信用が失墜するからです。
残された道は、経済成長を続けることです。そのためには食料も、水も、そしてエネルギーも足りない。覇権を握ることで、経済成長を限りなく続けようとしているのだと思います。
ジャパン・クオリティ
泣いているのはアフリカの皆さんです。日本に来ておられるアフリカ諸国の大使の方々との晩餐会に出たことがあります。皆さん、口を揃えて言いました。「日本のお金が来てくれないので、しょうがなく中国に頼みました」と。そして、最初の2、3年は良かったものの、その後に沢山の問題が出てきたと教えてくれました。
例えば労働者です。中国は、中国から連れてきた中国人を使い、現地のアフリカ人をほとんど雇っていないようです。現地にて雇用が生まれていないのです。工事の質も問題になっています。中国が造った道路は凸凹で、雨が降ると水はけが悪く、まともに使えないものが多い。
一方、日本の援助については皆さんニコニコと話してくれました。JICAがしてくれたこと、さらにはODAで出来たインフラ整備など、本当に素晴らしいクオリティだと褒めていました。大昔に出来た道路も、いまだに問題なく使われているようです。
西鋭夫のフーヴァーレポート
2016年6月下旬号「尖閣諸島の情勢」-7
この記事の著者
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。
西 鋭夫
1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。