Ｂ２９製造拠点地

アイビー（蔦）で覆われた大学

占領が終わってまだ１０年ほどしか経っていなかった日本では、米東部の古い歴史があるアイビー・リーグ校が有名校であると思われていた。

「アイビー」は「蔦」で、建物が蔦で覆いつくされるほど古い大学ということだ。アイビー・リーグ校は今でも有名校であるが、アメリカの「中心」は東部から西部に移りつつある。

「アメリカ文化センター」のブレティンに全部目を通すつもりで意気込んでいたが、２日目の午後から不可能と悟り、ニューヨーク市にあるコロンビア大学(私立、アイビー・リーグの一校)と日本に近い西海岸のシアトルにあるワシントン大学(州立)、もっと日本に近いホノルルにあるハワイ大学(州立)の３校に、入学願書を送って下さいと手紙を書いた。

志望校

ニューヨークについての私の知識は、「摩天楼・世界一の大都会・富の象徴」。

シアトルは、日本を灰にした恐怖の大爆撃機Ｂ２９を大量製造したボーイング社がある港町と日系移民の多い町。

ホノルルは、真珠湾攻撃と「世界の楽園」であった。なぜ、この３校を選んだのか、今となっては憶えていない。

Ｂ２９

１ヵ月ほどして、３校からの願書が届いた。見たこともない英単語が一行に数個もあり、願書の書き方(質問事項)も分からない。関西学院の教授に尋ねても、「西君、これは分からない」と全面降伏である。

無謀なことをしているな、と心配して下さっていたのだろう。

願書に記入するにあたり「タイプライターで書く」か、または「プリントせよ」と注文がついている。タイプなぞしたこともないので手書きにしようと思っていたが、「プリント」ときた。私の頭の中ではプリントとは印刷物である。

西鋭夫著『日米魂力戦』

第１章「遊学１９６４年」-２