吉田茂と憲法九条

by 西 鋭夫 October 16th, 2023

日米安保

緊迫したアジア情勢の中で、なぜ日本では本格的な安全保障論議が始まらないのか。政治家の先生も含め、危機意識がないのはなぜか。米国というやくざにいいように洗脳され、依存させられているからでしょう。

米国はたちの悪い用心棒ですよ。「おまえの土地をちょっと借りるよ」と言って、すでに75年が経っています。借りると言っても、1円も、1ドルもお金を出しておりません。そのお金は私たちが出しているのです。「どうぞ、どうぞ使ってください」「日本を守って下さい。お願いします」とそんな状態です。

私たちの税金8,000億円に加えて、私たちが知らされていない部分がおそらく1兆円規模であるのでしょう。日本は何を考えているのでしょうか。これを永遠と80年近く続けています。この構造に対して文句を言う政治家はほとんどいません。それを疑問視することも許されないような雰囲気があります。

占領

この起源はどこにあるのか。最初の躓きは占領が終わった1952年です。マッカーサーによって骨抜きにされた日本が国際社会にほっぽり出されました。もちろん、その間の朝鮮戦争により、日本列島は米国にとっての重要な要塞となりました。それで、弱い日本のままでは米国のために何も出来ないということで、財閥解体を止め、「三菱重工、頑張れよ」などとやったのです。

しかしながら、米国が少し気を抜くと日本の再軍事化を招く可能性があるとして、吉田茂を巻き込んで日本の国のあり方を決めていきました。つまり「独立させてやるから、代わりに基地を置かせろよ」「アメリカと日本は運命共同体だからな。それをきちんと理解しろよ」といった感じです。それで米国と日本との間の安全保障条約が締結されました。

九条

私は色々なところで憲法の話をしておりますが、占領期間中に出来た憲法を改定もせずに、いまだに崇めているのはおかしな話だと考えています。平和の礎のように思われている九条ですが、マッカーサー草案に基づくもので日本人が考えたものではございません。アメリカにとって都合の良いように作られたものです。吉田茂をうまく使いながら、日本が承認したかのように見えますが、完全に押し付けられた憲法です。

九条はまた当時の日本においては全く浸透しておりませんでした。皆さん、あのときの日本人は食べ物を探すことに必死でした。誰も九条の意味など考えられない時です。

それから世界はどんどんと変わっていきましたが、日本は何を錯覚したのか。武器を持たないことがイコール平和だと錯覚しながら、平和教育という名のもと、憲法九条を神聖化し始めました。そんな平和教育の第一期卒業生は私たちの年代です。武器を持たないことが平和だと言いながら、米軍の駐留を許す国。しかもその費用は全額負担です。この状況に対して誰も文句を言わない。これは恐ろしい洗脳でしょう。




西鋭夫のフーヴァーレポート
第三次世界大戦の予兆(2019年6月上旬号)-6


 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。