元号に宿る魂

by 西 鋭夫 December 26th, 2022

西暦とは

日本は元号をやめて、世界標準の「西暦」に従うべきではないか、という議論があります。皆さんはどう考えますか。

私は従うべきではない、と考えています。西暦はイエス・キリストが生れた時から数えて何年目というものでしょう。イエス・キリストより日本は古いのでしょう。それなのに、なぜ西洋の物差しで日本人の時間を測らないといけないのでしょうか。どうして日本がキリスト教の基準に合わせなければいけないのでしょうか。

元号を辞めて、西暦に統一せよというのは非常に乱暴な議論です。最近ではなんでもかんでも「グローバル化せよ」という発想があるように思います。このことにもガッカリです。元号廃止論と同じで、これも日本を西欧の物差しで測りましょうという発想です。日本には、西欧の物差しでは測ることのできない事柄がわんさかとあふれております。





中華帝国の象徴

元号を使うことをやめてしまった国があります。それが中国です。非常に大きな領土と10億人以上の人口を抱えるこの国は今、元号を廃止したことを悔やんでいるのではないかと思います。

元号はいわば皇帝を頂点とした支配体制の絶対性を象徴するものです。それは数百年どころか、千年、二千年以上も前から続いてきました。人々は元号の中で生きてきたのです。時の皇帝の権威に平伏し、忠誠を誓ってきたのです。この元号を、中国は最後の王朝が倒れたのを機に使うことをやめてしまった。

皆さん、これは国家としてはかなり危うい状態です。というのも、元号とはまさに中華帝国の象徴だったからです。それは人々の拠り所であり、人々の結束を促すものでもありました。帝国の象徴を失った今の中国には「お金」しかありません。しかしお金は流動的で脆い。

 

形骸化した共産主義

中国には「共産主義」があるのではないかと考える人もいるでしょう。もちろん形式上は残っていると言えるでしょう。しかしどれだけの人が今、共産主義を信じているかどうかは分かりません。

例えば、現在の中国の人口は13〜14億人ほどですが、共産党員はおよそ8000万人しかおりません。その中でも本当に共産主義を信じているのはごくわずかでしょう。

そんな状態ですので、もしどこかで共産党に対する反乱が起きれば、取り返しがつかないことになる。それを知らない習近平陣営ではありませんから、国民の監視には非常に多くの時間とお金をかけております。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
2019年1月上旬号「平成史と元号」-3

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。