領土をめぐる攻防

by 西 鋭夫 September 12th, 2022

国防意識

陸続きの大陸国に住む人々にとって、国境や領土は不変なものではなく、常に変わるものでした。というのも、大陸国では戦争が起きる度に国境が変わってきたからです。国境はもちろん勝者が決めます。戦いの繰り返しにより、国境は何度も書き換えられ、一直線のところはほとんどありません。一直線に引かれた国境があるとすれば、それはヨーロッパ諸国やアメリカの植民地だったところです。アフリカがその典型です。定規で国境を引きました。




一方、陸続きでなかった日本は島国でしたので、陸地から攻められることはありませんでした。そのため、何千年も前から同じ人間が暮らしてきました。そのため「日本人」という意識は非常に高いのでしょうが、国境という意識はほとんどありません。守らないといけない、という気持ちさえもないでしょう。

国境というのは人間の体でいうと皮膚です。国境を破られると血が出ます。領土や領海というものがいかなるものか、島国育ちの日本人には厳しく教えた方が良い。

 

尖閣諸島

地形上、何千年も恵まれた日本では、領土や領海に関する意識がほとんどありませんでした。そのため、周辺諸国からどんどんとつけ込まれている状況です。その典型例が尖閣諸島です。

尖閣諸島には海底資源として油田が眠っていますので、日本はすぐにでも掘り出すべきでしょう。しかしモタモタしている間に中国に先を越されてしまいました。

その時、日本政府は何をしていたのか。私は国会中継を見てがっかりしてしまいました。政治家にも領土や領海を守る意識がほとんどないのです。尖閣諸島にてまさに中国が石油を掘り出しているとき、日本では朝から晩まで学校建設に関する土地買収疑惑の話でした。国会議員の先生方は、私たちの財産と生命を本当に守ってくれるのでしょうか。

 

北方領土

北方領土も大きな問題です。あの島々をどうするのか。現在はすでにロシアが実効支配しておりますが、返還交渉に臨む場合、私たちはどれだけ本気でいけるのかのでしょう。奪還すべき、と口ではもちろん言えますが、私たちは国全体としてそれに耐えるだけの精神力がありません。

戦争の最中、原野で誰かが撃ち殺されたり、爆弾が落ちたりするのを見たことがないのです。あの島を取りに行くために、日本外交はどこまでできるか。「無理だ」と言っているのではないのです。そういう話をもうそろそろ始めないといけないのです。

 

西鋭夫のフーヴァーレポート
2018年10月上旬号「米中衝突と日本」-3

 

 

この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

人気の投稿記事

ミャンマーと北朝鮮

アジア最後のフロンティア 北朝鮮の今後の動向を予測する上で、東南アジアにあるミャンマーは一つのポイントです。ミャンマーはアジア最…

by 西 鋭夫 November 8th, 2021

中朝関係の本当の姿

水面下でのつながり 中国が北朝鮮の核実験に対して、断固反対すると声明を出しました。しかし、中国の習近平政権と、北朝鮮の金正恩政権…

ミサイル / 中国 / 北朝鮮 / 核実験 / 米国

by 西 鋭夫 November 1st, 2021

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。