皇室と大学

by 岡崎匡史 January 9th, 2021

blog190.jpgFrom: 岡崎 匡史
研究室より

寄附活動が活発となり、政財界の支援を受けたことで、日本にキリスト教主義の大学を設立する気運と情勢は整った。

大学建設の地に選ばれたのは、広島ではなく、東京の三鷹。

三鷹にある広大な土地の一部は、「農地法」で保護されており自由に転売することはできない仕組みになっていた。しかし、GHQの高官が日本政府に大学建設の土地を確保するために購入許可を与えるように命令したため、容易に土地を得ることができた。

中島飛行場


46万4000坪(約379エーカー)の土地は、零式戦闘機で知られる中島飛行機(敗戦により「富士産業」と社名を改称)が所有している土地の一部であり、当時はGHQの管理下にあった。

土地購入のプロセスは、まず富士産業所有の土地に含まれている旧農地を日本政府が買収して、それから大学に払い下げるという複雑な手続きをとった。

GHQの後押しと、東京都農地委員会も土地買収計画に同意をしたので、大学は土地を取得できた。そして、土地を失うことになった農民に対しては、三年分の収穫高に相当する補償金が支払われ、農民の多くは大学の職員として採用された。

皇室と寄附


『ニューヨーク・タイムズ』によると、国際基督教大学財団に対して皇室から多くの贈与があったと報道している。 同様に、日本国際基督教大学財団は、皇室から相当な寄付を受けたと報告している。

『朝日新聞』は、天皇陛下が10万円、皇后陛下が5万円の寄付をしたと報道。『讀賣新聞』は、天皇皇后両陛下は、宮内庁長官でキリスト教無教会主義者のを通じて15万円を寄付したと報じた。

日銀の法王・一萬田尚登と共に皇族からは秩父宮勢津子(1909〜1995)が大学の名誉理事に就任して、皇室関係者が初めて公にキリスト教と関係をもった。

昭和天皇の弟である高松宮宣仁親王(1905〜1987)は、大学開設準備のための開講式で挨拶をなされる。高松宮親王は、「私は以前から基督教を信ずる人々が真面目であることをはっきりと感じていました。人格と道義とが頽廃に向かいつつあるこの悲しむ時代にあたって、基督教信者が日本の光となることを切に念願します」と仰せになられた。


ー岡崎 匡史

PS. 以下の文献を参考にしました。
・"International Christian University in Japan," February 1957, DeForest Papers, Box 1, Hoover Institution Archives, Stanford University.
・"University Works in Japan Pressed," The New York Times, 28 July 1949.
・レイ・ムーア編『天皇がバイブルを読んだ日』(講談社、1982年)
・武田清子『未来をきり拓く大学』(国際基督教大学出版局、2000年)
・ウィリアム・C・カー『日本の再出發』(新教出版社、1951年)
・「キリスト敎大学へ両陛下御寄付」『朝日新聞』1949年4月19日

・「両陛下、キリスト教大学へ御寄付」『讀賣新聞』1949年4月19日

この記事の著者

岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。

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岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。