ウィキリークスと大統領選

by 西 鋭夫 November 2nd, 2020

ヒラリー陣営の致命傷


2016年の選挙では、ウィキリークスも大きな影響を与えました。とりわけトランプ陣営にとっては大きな力になったと思います。ヒラリー候補者の私的メールだけでなく、ヒラリー陣営の選挙対策委員による極秘メールなども公開されました。裏工作も含めてすべて暴露されました。


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ヒラリーにとってジュリアン・アサンジは天敵です。「あいつは泥棒だ」、「犯罪者が出す情報には何の価値もない」などと言っています。しかし、ウィキリークスによって公開されたメールや情報はすべて偽物なのか。ヒラリー候補はここには全く言及しなかった。

彼女の過去の失態がすべて暴露された状態で、投票日当日を迎えました。


アサンジ暗殺計画


ヒラリー候補者が国務長官を務めていた2010年、ドローンを用いた「アサンジ暗殺計画」が検討されていたことが分かっています。ドローンとは無人操縦による航空機です。

日本でドローンというと玩具のような小さな飛行機をイメージしますが、アメリカが戦争で用いるドローンは大型の飛行機です。もちろんコンピューターで操作されておりますが、操作席から見るとゲームのような画面です。これはイラク戦争のときから使われていて、今現在(2016年11月現在)もアフガニスタンやシリアで使われています。

アサンジを具体的にどう殺害するか。現在彼は、ロンドンにあるエクアドル大使館に身を寄せていますが、そこを狙えば一瞬だったはずです。ただ、どのようにこれを実行するか、あれこれ様々な可能性を考えていた。その検討過程がウィキリークスにすっぱ抜かれたわけです。


アメリカ・ファースト


世の中に清廉潔白な人はおりません。人間であれば、誰しも叩けばホコリが出るものです。トランプ候補とヒラリー候補ですが、この二人は叩くほどにホコリまみれとなった選挙戦でした。

ヒラリー候補者の政策上の失態は、オバマ前大統領の失策を継続しようとしたことでしょう。誰の目から見てもわかるはずなのに、8年間におよぶオバマ政権の失態を失敗と言わずに、それを単に上書きして見せただけでした。

一方のトランプ候補は、前政権のすべてを否定することから始めた。前政権による、移民政策や対アジア外交、軍事安全保障政策、国内の医療保険政策など、すべての面での基軸を「アメリカ人を守ること」に置いた。すなわち、どんな時でもアメリカを一番の優先事項に考えていくという考えです。ここが全くブレなかった。「アメリカ・ファースト」を偽りなく、実現しようとしたわけです。



西鋭夫のフーヴァーレポート

2016年11月上旬号「大統領選挙速報」− 4




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。