核武装論

by 西 鋭夫 October 10th, 2019

日本に核は必要か

日本外交政策については、私はフーヴァーの親しい学者たちと昼食を共にしながら、意見の交換をした。穏やかに始まる昼食は次第に感情的な激論となる。感情論戦となる理由は、根本的な姿勢の違いがあるからだ。


84f.jpgスタンフォード大学内の「フーヴァータワー」

日本の再軍備に関し、アメリカが強力な圧力をかけてきている点について、私が、「日本国民がアメリカのお世話にいつまでもなっているわけにはいかないことは、十分に認識している。問題は、将来いかにして日本の自衛・安全を維持していくか、その手段について、まだ日本国民の間に同意ができていないのだ。もし、日本が再軍備に踏み切ると決定した場合、自衛のためにいずれは核兵器が必要となろう」と言うと、フーヴァーの学者たちは、「いや、核兵器拡大は世界平和維持に危険であると同時に、米軍事戦略とシンクロナイズさせれば、日本再軍備はそこまで促進させることはない」と反論する。


しかし、現実はそれほど甘くない。膨大な国費を使い、それでもヴェトナム戦争に敗れ、イラン人質問題でキリキリ舞いし、ソ連のアフガニスタン進攻に無抵抗だったアメリカだ。


そして、また台湾をも見捨てたアメリカである。さらに、アメリカは今、中国に手玉に取られているのではないかと思われるほど、右往左往している。


日本は米軍の足軽か

そこで、私は反論する。


「今や貧困国のパキスタン、インド、中国でさえもが核兵器を持っている時代に、富める経済大国の日本が重大な国防軍備をしようとする時に、核兵器を持たない軍隊をつくれというのは、おかしいではないか。アメリカ政府が称賛した日本の非核三原則(核兵器を持たず、つくらず、持ち込まず)で、この核兵器時代に自国の防衛を考えるのは、ノーベル平和賞がもらえるほど理想的だが、現実には機関銃の前に竹槍で勇ましく構えているのと同様、自殺行為である。日本が核兵器を持つのは困るというアメリカの心情はよくわかるが、核兵器を持つ、持たないの決定は日本の問題で、アメリカの出る幕ではない。」


「日本の核兵器保持に反対でありながら、なお、再軍備をせよと迫ってくるのなら、日本は"アメリカ帝国軍隊"の足軽歩兵になれと言うのと同じである。そんなことなら、日本としては再軍備なんか、やめたほうがよい。」




西鋭夫著『富国弱民ニッポン』
第4章 富国日本の現状−15



この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。