プラトンと二元論

by 岡崎匡史 September 21st, 2019

blog125.jpgFrom: 岡崎 匡史
研究室より

「プラトニック」
男女間の恋愛が、肉欲を伴わない純粋に精神的なという意味。

このプラットニックという言葉の語源は、古代ギリシアの哲学者プラトン(Plato・BC427〜BC347)に由来します。

『ランダムハウス英和大辞典』を引いてみると、、、

「プラトン哲学の」「(感覚的なイデアの世界を愛し追及する)プラトン的愛の」「粋に精神的な」「観念的な、非実践的な」という訳語が並んでいる。

「観念的な」という言葉があるように、否定的にも捉えられかねない。「イデア」という言葉も、理解しずらい。だから、実践や経験を重んずる人にとって、プラトンはとっつきくい哲学者です。私もその一人でした。

アカデメイアの設立


プラトンは、紀元前387年に理想とする学園「アカデメイア」を設立。アカデメイアの入口には、「幾何学を解せざる者入るべからず」という有名な格言が掲げられていました。

このプラトンの言葉は、どういった意味なのか。

我々の目の前にある「現実」は、常に正しく「真理」を映しだしているように思えます。しかし、この認識の仕方には限界があります。

「肉眼」で見えるもの、経験できるものは限られています。人間の一生は儚く、すべてを「経験」できる人間なんていない。だから、肉眼の奥にある「心の眼」、イデアを使って現象を把握しなければならない。「眼に見えないものを見る」ことが不可欠になってきます。

深遠なことのように聞こえるかもしれません。ですが、これは誰にでもできる単純なことです。

幾何学を解する


「眼に見えないものを見る」とは、具体的にどういったものなのか?

たとえば、「正三角形」を思い浮かべてください。あなたの頭のなかで、「正三角形」は簡単に描けたはずです。

では、実際に紙の上に鉛筆で「正三角形」を書いてみましょう。あなたが描いた「正三角形」、じっくり見るといびつな形をしていませんか? 

数ミリメートル、数マイクロメートルの「誤差」が辺や角度にあるはずです。ましてプラトンが活躍した時代に、寸分の狂いもない「完璧な正三角形」を作りだすことは不可能です。

しかし、私たちは誤差があることを認識しつつも、いびつな正三角形を「完全なる正三角形」と見なしています。心の眼で、イデアで、理想的な姿を描いているのです。


ー岡崎 匡史

この記事の著者

岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。

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岡崎匡史

岡崎匡史

日本大学大学院総合科学研究科博士課程修了。博士(学術)学位取得。西鋭夫に師事し、博士論文を書き上げ、著書『日本占領と宗教改革』は、大平正芳記念賞特別賞・国際文化表現学会学会賞・日本法政学会賞奨励賞を受賞。