自衛隊の存在意義

by 西 鋭夫 January 24th, 2019

ユートピア平和主義


日本経済の繁栄の基盤となっているものは、世界の平和秩序である。この秩序を破壊する国(イラク)は日本の国益、日本の将来を脅かす国なのだ。その国に対して、いかなる軍事対策をも採ろうとしない日本の態度は、まるで日本国自体を放棄したとも思える信じ難い事態なのだ。

こうしたバカげた事態が実際日本国内で起こっており、またそれを有識者とか評論家とか言われる人々は、マスコミに煽られて延々と論議している。俗に言えば、殺されそうになっている者が、身を守るべきかどうかを検討しているのと同じである。

全人類が愛し合うユートピア(理想郷)は誰もが望んでいる。だが、現実に近代兵器で組織された軍隊によって他国に侵攻し、暴虐、略奪、集団虐殺を行い、そして占領するという、とてつもない無法の国が目前に存在する時、日本で絶対平和主義を念仏のように、魂のないロボットのように唱えている人々は、激動する世界の実態、すなわち各国の国益が絡み合い、それが強烈に武力をもって争われている現状を知らないか、または無視している井の中の蛙である。


動けない自衛隊



日本は世界の大経済国だ。それに見合う役割を檜舞台で実行したいと望んでいるのだが、いざその機会が来るや否や、無力の言葉を吐き、逃げ口上をつくり上げる。世界中からの軽蔑を買うのは当然である。日本国民が自己嫌悪に陥らないのが不思議だ。

今の日本には、日本の国益を守れるだけの軍事力があるではないか。国連軍に十分貢献しうる警察力が、日本にはある。自衛隊だ。

湾岸戦争で指一本動かさなかった(動かせてもらえなかった)自衛隊は、いったいなんの名目で、その存在を正当化しているのだ。多額の国費を使い、世界でもずば抜けて優れた武器を持つ自衛隊は、なぜ世界の危機に直面して動きが取れないのか。


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世界第二の国防大国


日本の防衛費は、アメリカについで世界第2位だといわれている。もっとも、人件費の占める割合が高いのだが、武器の輸入も、自衛隊は世界で2、3位を争うぐらい買い込んでいる。もちろん、世界で最も優れた武器を買っているので、日本自衛隊の装備たるや、世界のどの国と比べても恥ずかしくない。

日本の経済活動、そして人材や資産が世界中に拡散している時代に、国連軍に加勢して世界の秩序を守らない日本の自衛隊は、その存在価値を再吟味する必要がある。使わない、使えない自衛隊は浪費を重ねる居候だ。


「9条」という言い訳


このような議論を持ち出すと、すぐに憲法第9条が出てくるが、世界の平和秩序のため、日本の国益のため、日本の自己防衛のためには、サダム・フセインの暴挙を武力制裁することは最も緊急であり、憲法論議の対象以前の問題であったといえる。

日本は都合の悪いときには必ず「憲法第9条」を持ち出し、まるでそれがすべてに関して「言い訳」の盾になると考え、その盾の後ろに隠れていれば逃げ切れるとでも思っているのだろう。



西鋭夫著『富国弱民ニッポン』

第1章 富国日本の現状−6




この記事の著者

西 鋭夫

西 鋭夫

1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。

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西 鋭夫

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1941年大阪生まれ。関西学院大学文学部卒業後、ワシントン大学大学院に学ぶ。
同大学院で修士号と博士号取得(国際政治・教育学博士) J・ウォルター・トンプソン広告代理店に勤務後1977年よりスタンフォード大学フーヴァー研究所博士号取得研究員。それより現在まで、スタンフォード大学フーヴァー研究所教授。